仏具用装飾金具製造のノヨリ(名古屋市、野依克彦社長)はファッション小物雑貨の製造卸に乗り出す。仏具製造で培った技術をピンバッジ、ピアスやイヤリング、ヘアアクセサリー作りに活用する。セレクトショップや百貨店などに拡販するほか、ECでも販売する。
(森田雄也)
販売するのはメンズ向けピンバッジ主体の「ななこ」、イヤリングやピアス主体の「錺(かざり)」、テーブルスタンドやバレッタなど髪飾りの「花降ぅり」の3ブランドだ。
ななこはカツオやフグ、ヒラメといったリアルな魚モチーフの立体感あるピンバッジ。野依社長が好きな魚釣りから着想したもので、ブランド名は彫金技法の一つである「魚々子(ななこ)」から付けた。
銅や真鍮を立体的に
バッジの素材は仏具でも使う銅。魚のモチーフを銅に複写し、バーナーを使って高温に熱する。熱で柔らかくなった銅にマツヤニと漆器などの塗り下地である砥(と)の粉、油を練った生地を接着し、仏具装飾の工具であるタガネを使って彫る。すると衝撃を与えると膨らむ生地の特性で銅が立体的になるという。彫金技法は仏具作りと同様の蹴り彫りを用いる。
銅の切断やヤスリ掛けなど様々な工程があり、ピンバッジ一つの製作におおむね2時間かかる。7000~1万円。
19年度には愛知県が産地企業にマーケティングの専門家を派遣し支援する「伝統工芸産業ブラッシュアップ事業」にも選ばれた。
錺では日本の伝統的な模様であり、仏具でも使われる唐草や亀甲(きっこう)、青海波(せいがいは)の模様を彫ったイヤリングやピアスを販売する。素材も仏具で活用される銅のほか、真鍮(しんちゅう)も用いる。デザインは野依社長が中心となって考える。3000~3500円。
花降ぅりは東京のデザインオフィス、メモリの宮内秀明氏にデザインやコンセプトの監修を受けたテーブルスタンドやバレッタなどを作る。テーブルスタンドで7万2000円、バレッタで5000~1万円。
合同展で販路を開拓
10月には東京の合同展示会に出展し、セレクトショップや百貨店、インテリア専門店などを開拓する。製品として作り込み、在庫を抱えて販売する計画。卸販売に先駆け、今春からハンドメイド作品を集積したECモール「iichi」での販売もスタートした。
物作りはCAD(コンピューターによる設計)を配置した本社で行う。タガネを用いた手作業が多いが、NC彫刻機やレーザー加工機などの機材も揃える。
創業は1970年。仏壇の装飾に使う錺と呼ばれる金具の製造を行っている。名古屋は京都と並ぶ仏具作りの一大産地で、「尾張仏具」として17年1月に国の伝統的工芸品に指定された。野依社長も伝統工芸士に認定されている。
だが、海外からの安価な製品の流入に加え、「ライフスタイルの変化で業界全体が厳しい」(野依社長)。次の売り上げの柱を作るために、小物雑貨製造卸事業に乗り出した。