街や企業がアートと融合 市内の魅力を再発見
岡山市中心部を会場とした現代アートの芸術祭「岡山芸術交流」(同実行委員会主催)が10月上旬に始まった。日本全国で様々な芸術祭が開かれる中、岡山芸術交流は、世界のアーティストの作品を徒歩で見て回れるコンパクトさが魅力の一つだ。作品の展示だけでなく、市内のユニークなスポットを紹介したマップや、岡山のレストランが登場する屋台など、岡山の魅力をいろいろな角度から再発見できる仕掛けを行っている。11月27日まで。
市中心部の徒歩15分圏ほどのエリアに、世界16カ国、全31組のアーティストの作品が展示されている。展示手法においては、市内の既存施設に改めてスポットを当てた。例えば、路面電車の城下駅前にあるリアム・ギリックの作品は、元々、地下スペースに光を取り込むためにあった大きな採光塔をカラフルに彩ったもの。
市立オリエント美術館では、古代の器などの既存展示物と並んで現代アートが展示されている。県庁前広場なども会場となっているが、県庁舎の設計は元々、モダニズム建築で知られる前川國男氏によるもの。改めて見ると、整然としたファサードなど建築物としての魅力に気づかされる。
地元企業との協業も行った。林原美術館の庭には、ピエール・ユイグの作品を展示。裸体像の頭部がハチの巣になっているというインパクトのあるオブジェで、岡山の山田養蜂場の協力で制作された。芸術祭の公式グッズでは、和菓子の廣榮堂とアーティストが協業したオリジナルパッケージのきびだんごも販売している。
アーティストトークなどのイベントも、展示会場内ではなく、あえて市内の古本カフェなどで行い、来場者が岡山の街に触れる機会を増やした。期間中の土日祝日には、エリア内に建築学科の学生による屋台プロジェクト「ちいさな〝テロワール〟」が登場。岡山の人気レストランの料理を味わえる。会場マップは、作品の展示場所を表示した通常版に加え、老舗の銭湯やバス会社のロゴ、橋からの眺めなど、ちょっと変わった視点でエリア内を紹介する特別マップも制作した。
同芸術祭は、実行委員会会長を大森雅夫岡山市市長、総合プロデューサーを地元企業ストライプインターナショナルの石川康晴社長が務めている。開催を通じ、市民さえも見過ごしていたような「岡山の素晴らしい既存の資産を見直すきっかけになれば」と石川氏。芸術祭を見学する児童も多く、子供たちに創造性を与える教育的役割も重視している。将来的には、「アーティストたち自身が素晴らしいと言ってくれるような、世界で最も影響力のある芸術祭にしたい」と話す。