婦人靴製造のパイロットシューズが今春、自社ブランド「ウィステリアフジワラ」を立ち上げた。浅草にカスタムオーダーの直営店を開設し、一人ひとりに合ったサイズの靴を提供するとともに、長く履き続けるためのメンテナンスを行う。BtoC(企業対消費者取引)のコミュニケーションを密にすることで、物作りの新たな仕組みを構築する。
(須田渉美)
68年創業の同社は、プラット製法やボロネーゼ製法など履き心地の良さを高める技術に優れ、浅草の婦人靴メーカーの中核を担う1社でもある。全日本革靴工業協同組合が運営する認証革靴事業に参加し、藤原仁社長は、昨年から百貨店などで受注販売しているカスタムオーダーのパンプス「i/288」の仕組み作りなど事業の推進役を担ってきた。ウィステリアフジワラは、認証革靴の品質基準にのっとったパンプスを活用するファクトリー発のブランドだ。製造から販売まで自立して取り組むモデルケースを目指す。
直営店は、靴関連の工場が立ち並ぶ東浅草の一角にある。パンプスは、多くの人が無理なく履ける4.5センチヒールのアーモンドトウで、長さと幅の組み合わせで112サイズあり、女性らしいバレエシューズなど3デザインを揃えた。エレガンスを引き立てる6センチヒールのポインテッドトウもある。自社工場の強みを生かし、マニッシュ系でレースアップシューズ、ローファー、オペラシューズの3型を作った。それぞれに合った革素材を用意し、3万8000~4万3000円。
専任のスタッフが3D足型計測器で両足を計測し、最適なサイズの靴を受注販売する。左右異なるサイズの購入も可能だ。これらは認証革靴の基本のやり方で、自社でリアル店を運営する狙いは「売って終わりではなく、メーカーとしての責任を果たすこと。着用期間や加齢によって履き心地は変わるので調整や修理が必要になる。そこまで品質を担保できる靴であると価値を伝える場にしていきたい」という。
他社に先駆けた挑戦となる。「認証革靴を生かして店を出す企業が増えれば、足を運ぶ人が増えて活性化し、本当の意味で靴の街になるのでは」と期待は膨らむ。