ジーンズカジュアル専門店のライトオンは顧客の声を生かした店頭での接客力の強化が成果を上げている。昨年10月に導入した顧客ロイヤルティーを測る指標「NPS(ネットプロモータースコア)」(調査支援エンゲージ)を全店(400店超)で取り組んだことで、販売員のモチベーションも高まり、顧客満足の向上につながった。EC全盛の時代だからこそ逆に「店頭での接客の重要性を再確認できた」と強調する。
全店導入前の20年1月に埼玉県の23店、9月に45店、21年5月に150店と店頭アンケートで顧客の声を調査した結果、客単価・売り上げの向上との相関関係が明らかになった。回答数が多く、客の評価が高い店の方が前年よりも数字が伸びていた。コロナ下でセルフ販売を好む客が多いと想定していたが、実際は販売員が声かけした方が高い満足度を得られると分かった。
アンケート内容は接客や店舗環境に関する14問。客の声は週4000~5000、累計26万件集まり、回答率は客数の2%を維持している。これらをどう分析し、活用するかが、今後の課題となっている。
ただ、全店導入時には、まだまだ半信半疑のスタッフも多かったため、推進役の高橋圭店舗統括部部長が全国を回り、成功事例の共有、仕組み作りに努めた。これまでの売り上げ至上主義・成果主義から顧客満足度向上へ、接客など販売のプロセスを大切にするNPSの指標に意識改革をしなければならなかったからだ。
22年3月には部内にCSES推進チームを新設し、社内報で周知するなど、店頭から本部までがポジティブに取り組める態勢を整えた。NPSの観点から社長賞に選ばれた店が社内報の表紙を飾った。最近では各店の現場の販売員が自発的に客の声を大事にする行動をとるようになってきたという。
「数年前から消費動向も激変し、コロナ下でEC市場も高止まり状態だ。スマートフォンが主役となるなか、ジーンズカジュアル専門店も従来型のチェーンオペレーションによる全国一律という効率的な店舗運営、全店統一MDも今後は変わらざるをえない。各店が商圏や地域性などの特性に対応し、接客や商品、店舗環境などに個性を出す時代になる」(高橋部長)とみている。
6月に導入した「スタッフスタート」をはじめ、これからは〝個〟にフォーカスしたファンづくりを強化する。今回のNPS導入による販売員を主役とした取り組みは、離職率の低下やアルバイトから正社員希望者の増加など従業員満足(ES)にもつながり、中・長期的には人材確保が困難な時代に優位性を発揮することが期待できる。