ユニセックスの日常着「リュー」を手掛ける木村竜也さんは今夏、新たなプロジェクト「リューヤキムラ」を立ち上げた。ハンドクラフトの物作りを独自の視点で発展させて、感情に働きかける作品を作る。それらを応用した製品を受注生産で提供していく。
(須田渉美)
「リューを立ち上げてほぼ20年。半年に1回のコレクションを40シーズン、卸売りを続けてファッションビジネスを突き進んできた。その一方で、もう少し自分に向き合う時間を取りたい気持ちが湧いてきた。一つのテーマを掘り下げてアウトプットするクリエイションにも挑戦していきたい」と木村さんは話す。リューも素材やディテールにこだわって物作りしているが、これまでの経験を生かしながら個人の創作活動としてリューヤキムラに取り組んでいく考えだ。
異なる素材の融合
今回は硬質的な陶の質感を柔らかな洋服のテクスチャーで表現する作品を作った。一つは、手編みで造形的なフォルムを作ったニットドレスの「土紋」。ダイナミックにたわんだ立体のシルエットが胸元を飾り、手首にはチューブ状のディテールが連続する。粘土で形作る過程をニットに置き換えた。
もう一つは、金継ぎを発想源にしたテキスタイルアートの「継陶布」。ざらついた手触りで、ハリのあるウール混コットンの布帛に、釉薬(ゆうやく)がかった色をプリント技術で表現。そのテキスタイルを西陣織で使う金糸で筒状に縫い合わせて金継ぎした花器に見立てた。「器のかけ継ぎした部分はデザイン的な装飾になる。理にかなったディテールは洋服にも通じるところがある」と捉えて、ドレスにも応用。金糸のステッチによってスカート部分のシルエットを変化させた。
直営店で発表
9月中旬にはリューを東京・蔵前で販売する直営店「コバチトウキョウ」でこれらの作品を発表した。継陶布の風合いのもとになった器を作る故金あかりさんら3人の陶芸作家、1人のガラス作家の作品とともに見せた。布とニット、器の力強く温かな質感が交わる空間を作り上げた。
受注生産の製品は、継陶布を使ったシンプルなパンツやドレス、コート、器の色に近い手編みのローゲージセーターなどを揃えた。購入者の体に合わせて調整しながら自社のアトリエで作る。価格はパンツ5万円から、コート15万円から。展示イベントは大阪など他の会場も予定する。