1968年に大阪でひとりの主婦が始めた手織り手法「さをり織り」が、米国で静かに広がっている。ニューヨーク日系人会・女性実業家の会が主催した講演会「布を織るのではなく、自分を織る~ニューヨーカーの心を紡ぐ瞑想の織り“さをり織り”の世界とは~」で、その現状が報告された。
さをり織り創始者の城みさを氏から直接指導を受けて以来、米国でさをり織りの普及に尽力している佐藤根有可子さんは、05年にニューヨークでさをり織りができる場「ループ・オブ・ザ・ルーム」を開設した。最初は人集めが大変だったが、米国人の親は子供のアート教育に熱心であることから、子供向けクラスを始め、以来、多くの子どもたちの他、自閉症やダウン症の人、目の見えない人にも教えている。
佐藤根さんは今年、非営利団体「さをり・アーツ・ニューヨーク」も設立。クラウドファンディングの「キックスターター」で集めた資金を使い、さをり織りの布を使った服のファッションショーを4月にニューヨークで開催した。
ループ・オブ・ザ・ルームに在籍する、さをり織りアーティストの鶴田伸子さんは、「カリフォルニアでは、50代から60代の禅好きの米国人の間で広がってきている。ニューヨークは若い子の方が関心が高く、FIT(ファッション工科大学)やパーソンズの学生で卒業制作用に織りに来る人たちもいる」と話す。会場には織り機が2台持ち込まれ、参加者が試してみる姿が多く見られた。(ニューヨーク=杉本佳子通信員、写真も)