【多様な顔を持つ業界人】異なる一面で新たな出会い

2018/10/20 07:00 更新


【センケンコミュニティー】《アノ人の別の顔》特別編 異なる一面で新たな出会い

 多様な働き方が注目される昨今。プライベートな時間を持てるかどうかが仕事選びで重要になってくるなど、仕事に一途に打ち込むことだけが正しい働き方とは限らなくなってきています。

 趣味やライフワークなど色々な一面を持つことが、仕事にもプライベートにも生かされる--今回のセンコミはそんな多様な顔を持つ業界人を紹介します。

パラレルキャリアで〝個〟磨く

≪ゆかたイベント主催≫ 「ワオネーション」飯田安紗美さん、岡部のぞみさん、都田由梨奈さん

 おしゃれなゆかたイベントを開催している和文化発信プロジェクト「ワオネーション」は、普段は会社員としてバリバリ働くアラサー女性たちが16年に立ち上げた。PR会社の飯田安紗美さん、出版社の岡部のぞみさん、大手通信キャリア会社の都田由梨奈さんの3人は、本業のノウハウや海外経験を生かして終業後や休日に活動している。

普段は会社員として働く3人(左から岡部さん、都田さん、飯田さん)

 自分たちがきものや日本酒など日本の文化に興味を持ち、「ほかの人にももっと知ってほしい」というのがきっかけだ。加えて、長く海外に住んでいた飯田さんは、「20年の東京五輪に向けて多くの外国人が日本を訪れる。そのとき、日本人が日本のことを誇らしく語れるようにもしたかった」と話す。

 とはいえ、「和装は一般の若い女性にはハードルが高い。どうすれば着てもらえるのか?」と考え、16年、東京・青山にゆかた女子100人を集めたフォトジェニックで〝ちょい和〟なイベント「ユカタフュージョン」を企画した。夜の花火大会と違い、イベントは空調の利いた屋内なので快適で、自撮り写真もきれいに撮れる。ゆかたを着るといつも以上に可愛く見えるし、「女性たちも自然と笑顔になる」。プロの着付け師によるお直し、シャンパングラスで飲む日本酒など協賛も付いた。予想を上回る人数が来場し、大きな手応えを感じた。

 翌17年はストライプインターナショナルの協力で、同社の東銀座のショールームを会場にゆかたファッションショーなども行った。そして3回目の今年は、ゆかたを着たいという男性の声を受けて男女のマッチングをテーマに両国で開催。互いにゆかた姿だと恋も生まれやすそうだ。ペアで一緒におみくじを引くと豪華景品が当たる、LINEの連絡先と一緒にバラを相手に渡すといった趣向も凝らし、大盛況だったという。

今夏に開催した「ユカタフュージョン」はゆかた男子も参加可能に

 3人の活動はパラレルキャリアとの位置付けで、会社とどちらが主でも副でもない。仕事で何かあっても「愚痴や悩みも、小さい話だと思える」(岡部さん)心の余裕ができた。「自分の活動を普段から発信していると何かのときに声がかかったり、色々な顔を持っていると両方に役に立つ」(都田さん)と感じている。アラサー女性は仕事、結婚、出産など人生の課題にも直面する世代。会社の看板無しで自分がどこまで通用するのか試し、「自分の〝個〟を作ることで新しい女性の働き方を示せたら」(飯田さん)。

 最近は日本酒イベントのプロデュースなど、主催以外の活動も増えてきた。ワオネーションでのもうけはほとんどないが、少しずつ資金をためて、いずれは和文化に関わる商品開発をと考えている。英語や中国語など3人とも外国語を話せるため、海外を絡めた仕掛けもできそうだ。

噺の魅力や心の機微を

≪上方落語の有名ブロガー≫ オッジ・インターナショナル社長・安井武昌さん

 大衆芸能として老若男女に愛される落語。その上方落語の有名ブロガーという顔を持つのが、オッジ・インターナショナルの安井武昌社長だ。

 落語との出会いは中学時代にまでさかのぼる。かつて梅田新道近くにあった寄席に足しげく通い、笑福亭仁鶴や、桂枝雀、明石家さんまの師匠として知られる笑福亭松之助などを観て、その面白さに目覚めた。06年に天満天神繁盛亭が復活したのを機に再び寄席に足を運ぶようになり、以来、その感想をブログ「ごまめ~の~いちょかみ」に書き留めている。「以前は毎週通っていた」というが、現在でも年間30日ほど足を運ぶ。演者の上手下手ではなく、噺(はなし)の解釈などその中身についての感想を記すことが多い。落語家でもそのブログをチェックしている人がいるそうだ。

 笑える話だけでなく、人情噺や怪談噺など様々なタイプがある落語。安井社長はその魅力を「人間のさがや、心の機微を感じられるところ」だと話す。「柳田格之進」という人情噺を聞いた際には話を聞きながら涙したこともあった。落語を通して知り合った仲間も大切な財産。「同じ趣味を持つもの同士、仕事を離れていろんな話が出来る。職種や地位も関係なく、気楽に話せることが楽しい」という。

 安井社長は落語以外にもゴルフや読書、クラシック音楽など様々な趣味を持つ。最近では短歌にはまっており、短歌を作る会にも通う。「話の引き出しがあれば、会話は楽しくなる。そうした部分は取引先とのコミュニケーションにも生かされている」とも。趣味の時間は仕事も含めて人生を豊かにしてくれているに違いない。

ぜひ気軽に寄席に足を運んでほしいと安井さん。今、イチ押しの落語家は笑福亭鶴二さんだ

(繊研新聞本紙10月5日付)



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