仏百貨店BHVの「シーイン」導入、地方5店を延期 有力ブランドの撤退が要因

2025/11/17 17:00 更新NEW!


BHVのシーイン常設売り場

 【パリ=松井孝予通信員】中国発ウルトラ・ファストファッション「シーイン」の地方展開が揺れている。シーインを導入した仏百貨店BHVを運営するSGMは、年末までに予定していた地方5店での常設売り場開設を全て延期すると発表した。オファーや価格政策の調整を理由とするが、背景には複合的な不安要因がある。

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 11月5日に世界初のシーイン常設店をオープンしたパリ・BHVは、「5日間で5万人来店」とSNSで発信し成功を強調した。一方で、メンズ、キッズ、大きいサイズ、低価格帯の品揃えについては物足りないとの声も多い。また、「興味本位で来た」と話す来店客も目立った。売上高などの公式データも公表されていない。

 開店延期の追い打ちとなったのが、ブランドのBHV離れだ。シーインの入居によるブランド価値毀損(きそん)への懸念に加え、SGM側の支払い遅延問題も指摘され、「ディオール」「シャネル」「ゲラン」「ランコム」など年末商戦の柱となる香水を持つブランドが相次ぎ撤退。例年はにぎわうコスメ売り場は空洞化が進む。すでに衣料や生活雑貨を含む20超のブランドも離れ、百貨店としての基盤が揺らいでいる。

 地方店でも同様の動きが出ている。もともと地方7店は「ギャラリー・ラファイエット」時代にローカル戦略で地元ブランドと共存してきたが、SGMへの移行後、方向転換した。地場ブランドは「価値観の不一致」で撤退、または取引継続に慎重な姿勢を示し、地方展開の足元をさらに弱くしている。各自治体も強く反発し、市民団体の抗議活動が広がっている。



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