「シブヤ109ラボ所長の#JDのエリア別ファッション観」

2019/11/11 06:28 更新


 県民性、地域性などについての話題は盛り上がる鉄板ネタですが、データを基に検証されたことはあまりないのではないでしょうか。先日、CCCマーケティングの保有するTカード会員の行動商圏を基にしたビッグデータと、シブヤ109ラボの若者に関する定性データを掛け合わせ、「渋谷・原宿・新宿・池袋」を利用する女子大学生(以下JD)の消費行動とファッションに対する意識を把握、各エリアの特徴の比較分析を行いました。今回は、4エリアに生息するJDのファッションに対する意識の特徴についてご紹介します。

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ファッションに地域性

 まず、生息エリアに関わらず「服の品質や機能が気に入れば、ブランドは気にしない」と回答する割合が高いのは、今の若者に共通しています。

 エリアごとに見ていくと、渋谷は「周りの人と違った服装をする」「下着など人目につかないところのオシャレをしている」の数値が他のエリアよりも高い傾向にあります。原宿は「自分のファッションが人からどう見られているか気にする」「他人のファッションチェックをよくしている」という自分のファッションに対する他人の目を気にしつつ、周りのファッションも気になっていることが分かる項目の数値が高いことが特徴となっています。

 渋谷・原宿は「トレンドの発信地」と言われることが多く、お隣に位置しているため併用されていることも非常に多いエリアですが、渋谷はトレンドを把握しつつも、周りの子と一味違うオシャレがしたいという意識があります。一方原宿は、「全方位型でオシャレに思われたい」「浮きたくない」という意識が強いため、トレンドを積極的に取り入れているなど、ファッションへの意識は若干異なるようです。

 新宿は、購読雑誌のデータを見てみると王道ファッション誌の他に『FUDGE』『GISELe』など少し大人びた雑誌を購読しているのが特徴で、「大人っぽく見られたい」という意識が強いようです。池袋は他のエリアと比較してファッションへの関心度が全体的に低く、「同性から浮かないファッション」を目指している傾向にあります。ファッション以外の消費実態として、「2次元(アニメ・漫画など)ヲタ活」にお金と時間を費やしているという結果も出ており、ファッションよりも自分の好きなコンテンツに対する投資を優先したいという意識がうかがえます。

各エリアのJD像

定性的な情報収集を

 今回、各エリアのJDイメージを作るにあたって、若者の情報収集拠点であるインスタグラムで、ファッションに関するハッシュタグを参考情報として活用しました。渋谷はこの1年間でおしゃれな若者から注目されている「#ピープス女子」、原宿は若者のマストレンドである「#韓国ファッション」、新宿は今年のトレンドであるベージュを基調とし少し大人っぽく見える「#消えそうな色コーデ」、池袋は「#コナン好き」(※TSUTAYAでの映画のレンタル履歴のランキング上位を名探偵コナンの作品が占めていたため)をそれぞれ参考にしています。ファッションは細分化しているため、このイラストがすべてではありませんが、ぜひ参考にしてみてください。

 この共同調査を実施して、私が最も実感したと同時に皆さまにお伝えしたいのは、定量的な情報をよりリアルに理解するためには、定性的な情報が重要なエッセンスとなるということです。

 顧客データを保有し、定量的に把握することは今や容易に行えますが、顧客像の解像度を高めてマーケティング活動に活用するためには、定性情報が必須となります。そして、自社のビジネスに関わる消費行動だけではなく、顧客のマインドシェアの高いカテゴリー(若者で言うヲタ活など)を把握し、実態を捉えることも重要となるでしょう。

●長田麻衣(おさだ・まい)
 シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社で、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。今年の目標は、若者に関する講演に講師として登壇すること。そして大人っぽさと透明感を兼ね備えた女性になること。

(繊研新聞本紙19年10月11日付)



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