ファッション産業が必要不可欠な存在であり続けるためには何が必要なのか――コロナ禍はファッションビジネスに打撃を与えるとともに、サステイナブル(持続可能)な物作りや流通について考え直す機会をもたらした。
世界トップの横編機メーカーとして無駄のない服作りとデジタル化を進めてきた島精機製作所の島三博社長と、洗練されたデザインとサステイナブルなコンセプトで多くのバイヤーが注目する新ブランド「CFCL」を手掛ける高橋悠介さんが、これからのファッションビジネスについて語り合った。
(青木規子)
◇1月6日、7日付1面で「教育」「働き方」「デザインの可能性」などをテーマに対談の続きを掲載します。
意思伝える機械へ/骨を削って作る
――ウィズコロナの時代、変化したことは。
島 コロナ前から世界のファッション業界は変調をきたしていました。サステイナビリティーがクローズアップされ、大量に作りすぎと批判をいただいていた。消費者は、本当に欲しいものしか買わなくなってきたのかなと思います。
我々が作る横編機は、洋服の数を作るマシンです。今後、台数の必要性はシュリンクしていくでしょう。それに対して何をしていくか。数に頼るのではなく、クリエイターの意思を本当に反映できるマシン作りが、我々が目指すべきところになると思う。
コロナ禍で売り上げは大変しんどいですが、それをカバーするためにもっとたくさん作るのではなくて、我々自身も形を変えなくてはいけません。文化も環境もライフスタイルも違う人たちが地球上には75億人いて、なんらかの服を着ています。その人たちが少しでもハッピーになれる服を作るためのツールを、我々はどうやったら展開できるのか。そこに軸足を移していきたいです。
高橋 100%同意です。コロナによって家でも仕事ができるようになり、ライフスタイルは大きく変わりました。そんななか、CFCLの初めての展示会を行ったら、アフターコロナの服にぴったりだねといろんな方に言われました。ニットを中心にしたことが大きな要因です。服はいろんなオケージョンに合わせて存在しますが、ニットはリラックス感があるのでソファで寝転んでもいいし、CFCLの服はそれなりにきれいに見えるのでよそ行きにもなる。起業を決めたのは去年ですし、コロナを意識した服ではありませんが、最初から環境問題を意識していたので、今の状況にリンクしたんだと思います。
対談テーマの「ファッション産業はエッセンシャル」について考えたときに、コロナ禍に行政が出したエッセンシャルワーカーのなかにファッション産業の人々が含まれていなかったことを思い出しました。衣食住の一つで、服を着ていない人はいないのに、エッセンシャルから外れていることに違和感があり、衝撃でした。ではエッセンシャルな服とは何か、と考えています。
――ウィズコロナ時代のファッションビジネスはどうあるべきか。
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