醤油(しょうゆ)市場は消費の二極化の深まりに応え、だし醤油の全国化、1リットルPETボトルの復調といった新たな動きがみられる。15年前に容器でのイノベーションを果たし、開封後も常温で品質維持。基礎調味料の代表格として価値、単価を高めて、市場を継続してきた。新たな密封・鮮度容器は市場の定番品となり、カテゴリー内でも容量、価値の二極化が進む。国内消費の減少に応じて輸出も増やし、継続性を高めている。
(日本食糧新聞社・吉岡勇樹)
だし醤油が拡大
北海道の昆布醤油、広島県の牡蠣(かき)醤油、九州の甘口醤油、外食店では一般的な土佐醤油などが全国に広がっている。昆布、鰹節といった伝統乾物などのだしを効かせ、うま味の機能性で食材の味わいを引き立てる。減塩効果もあり調理の味付けも1本で決まると人気。コロナ禍の内食増も契機に成長し、24年の食品スーパーのPOS(販売時点情報管理)データでも多くが上位にランクインした。
だし醤油で多いのが200~450ミリリットル(ml)の密封・鮮度ボトル。酸化を防ぎ、醤油の色味を保つボトルは09年ごろから誕生した。かつて家庭用の主力だった1リットルPETから需要が移り、密封・鮮度の販売シェアは全国でも5割近い。単価は1リットルPETに比べて倍以上。消費者に価値も伝えやすく、昨今のだし人気を取り込んだ。
減少の一途をたどっていた1リットルPETは24年、久しぶりに復調。インフレに収入増が追いつかない、実質賃金の減少が続いて節約志向が深まった。トップメーカーのキッコーマンの今3月期の1リットル売り上げは前年実績を超え、密封ボトルより安価な単価を伝えて、消費ニーズに応じている。
密封カテゴリーも
同様の二極化は密封カテゴリー内でも進み、450mlが中心ながら容量帯が200~300ml、600~620mlへ分化。200~300mlの小容量はだし醤油などで価値を高め、小世帯化で主流となった1~2人世帯向きと適量、使い切りのニーズに応える。同時に600~620mlはヘビーユースの経済性を強みに成長を続けている。
国内の醤油の出荷量は24年、前年実績並みの68万キロリットル(kl)で着地したとみられ、下げ止まった。1973年の出荷量129万klからピークアウトして半減も近いが、付加価値化とダウンサイズで収益性は着実に改善。輸出は数量、金額とも2ケタ成長して24年は初めて120億円を超える見込み。世界一の長寿を支える日本食の健康価値が定着し、肉料理といった醤油レシピの現地化も進んでいる。