【販売員のやりがいってこんなところ】「デサント」マークイズみなとみらい店店長 大澤一平さん

2023/08/16 00:00 更新


 キャリアや私生活の経験が接客やスタッフ育成に生き、仕事のやりがいにつながっている。客の立場で一人ひとりのニーズや悩みを引き出し、それに応える提案で喜んでもらえる瞬間に販売のだいご味がある。店頭で輝く店長に話を聞いた。 

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商品の魅力をかみ砕いて伝える 自衛隊で培った行動力と精神力生かす

 デサントジャパンの「デサント」マークイズみなとみらい店の店長、大澤一平さんは、異色の経歴の持ち主だ。新卒で陸上自衛隊に入隊。4年間勤めた後、「ずっと好きだった」というファッション業界の道へ進んだ。体を動かすことが好きで、ファッションも好き。このポテンシャルを現在、デサントの販売現場で生かす。

豊富な店長経験

 18年11月、「ルコックスポルティフ」の新店舗オープンに際して入社した。陸上自衛隊を除隊後、ファストファッションブランドで店長まで勤め上げた経験から、店長職での採用だった。その後、デサントのいくつかの店舗で店長を歴任。手腕を買われ、いずれも新店舗のオープニングを任された。

 マークイズみなとみらい店も、6月21日に改装オープンしたばかり。デサントがリブランディングを進める「プレミアムスポーツブランド」の世界を体現するため、改装した店舗だ。もともと隣り合わせで運営していたデサントマークイズみなとみらい店と「デサントブラン」横浜店が統合。カテゴリーが広がり、現在はトレーニングやフットウェアのデサント、スポーツウェアの機能性とモードなデザイン性を融合した「デサントオルテライン」、デイリーユースライン「デサントオルテラインI/O」(アイオー)、アウトドア向けのスポーツウェア「デサントオルテライン81」、「デサントゴルフ」を扱う。

マークイズみなとみらい店。改装後は、ネイビーを基調にした内装に。マネキンや商品説明も増やした

 総合力を高めるため、スタッフもベテランを中心に再構成した。それに伴って、大澤さんも同店へ異動、同世代や目上の先輩、後輩を束ねる店長となった。「最初は戸惑いもあった」が、各々の経験値が高いからこそ協力し合えることがある。「家族と同じかそれ以上の時間を共に過ごすメンバー。だからこそ、必ずありがとうと言うようにしている」という。

 店長としての仕事は、スタッフのトレーニングと計数管理、勤怠管理など。「スタッフスタート」の投稿にも力を入れる。以前、勤めていた店舗で投稿数、PV数、経由売り上げが、ブランドで1位を獲得した経験がある。そのノウハウを共有し、スタッフと一緒に取り組む。

分かりやすく的確に

 メイン業務の接客は、機能性に優れたウェアやバッグ、シューズ、アクセサリーなどの提案。ブランドではそれらを〝ムーブウェア〟と呼ぶ。一般的な日常服やおしゃれ着とは異なり、格好良い見た目のほか、一つひとつの機能性や商品特性をいかに分かりやすく伝えるかがカギとなる。そのため、「具体的な機能や加工の名前、横文字などの難しい言葉はできるだけ使わないように、かみ砕いて説明する」ことを心掛けている。

UPFは「紫外線を防ぐ効果」に置き換えるなど、接客の際は「難しい言葉はできるだけ使わない」という大澤さん

 この仕事をしていて良かったと感じる瞬間は、「伝えた言葉でブランドの良さを知り、商品を買ってより好きになってもらったとき」。「お客様の生活が豊かになるように」、その一心で言葉を紡ぐ。トップアスリートに提案する商品を作ってきたブランドの背景、物作りへのこだわり、日本のブランドならではの良さ。自信を持っておすすめできるポイントはたくさんある。需要を掘り下げながら、押し付けがましくならないように魅力を伝える。声を掛ける際は、触っているもの、足の向いている方向、身に着けているものなどを見て足がかりにする。

 広く知れ渡っているブランドだが、課題は意外にも若い世代を中心に「何の商品を売っているか分からない」という人が多いこと。「昔、スポーツをしていた頃に使っていた」くらいの認識の人も少なくないという。立地柄、新規客が多く、客層が20代後半~60代前半と幅広いこともある。スポーツシーンだけでなく、アウトドアや日常でも使えるアイテムが揃っていることをアピールする。

 今後も変わらず、「店頭でお客様にできることを追求していきたい」と大澤さん。まだまだ販売の仕事を楽しむ姿勢だ。「マニュアルはあるが、店長の采配で決めれられることが多い」ことも魅力に感じている。一通り経験した後の目標はスーパーバイザー。「自衛隊で培った行動力、精神力を生かせれば」とやる気をのぞかせる。

 また、同社にはスポーツ経験者や趣味としてスポーツに触れている人が数多く在籍。マークイズみなとみらい店も水泳やサッカー、アメリカンフットボール、柔道の経験者など、多彩な顔触れとなっている。自身の経験を接客に反映できるだけでなく、趣味やライフスタイルが近い人と働けることも楽しさややりがいにつながるはずだ。

(繊研新聞本紙23年8月16日付)

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