セレブに人気の無名デザイナー(杉本佳子)

2016/10/26 00:00 更新


 「起きることには意味がある」――よく言われるフレーズだ。私も、心底信じている。なので、思うようにいかないことがあっても、「きっと、後になってみたら、あの時うまくいかなくてかえって良かったと思えることが何かあるのだろう」と思うようにしている。

 先日出会ったニューヨークのあるジュエリーデザイナー、無名でしかも手頃な値段のジュエリーをつくっていてセレブに引っ張りだこなのだが、まさに「起きることには意味がある!」と思える、ユニークなストーリーを聞かせてくれた。
彼女の名前はジェラーニ・ネスビットさん。ニューヨークで生まれ育った彼女は、現在31歳だ。ジェラーニというジュエリーブランドを2011年にウエブサイトで売り始め、2017年ホリデーシーズンから卸し売りを始めた。



 ジェラーニさんのつくるジュエリーは、すべてステンレス製。シルバー色のはステンレスのみで、ゴールド色のは18金をステンレスにメッキしたもの。ニッケルや鉛、真鍮は一切使っていない。

 ジェラーニさんがステンレスのジュエリーをつくり始めたのは、彼女がニッケルアレルギーで、自分がつけられるジュエリーを見つけるのにとても苦労したからだ。これが、私が「起きることには意味がある」と思った1つめ。

 ちなみに、ステンレスなのでとても軽く、ビーチやプールなど水に濡れるところにいても外さなくていい利点もある。



 ジェラーニさんは、独学でジュエリーづくりを学んだそうだ。「ブランドを始める前は何をしていたの?」と聞いたら、その答えは「フェデックス」。彼女は、フェデックスの営業所で7年も働いていたという。でも、それが「起きることには意味がある」の2つめになったのである。

 というのは、彼女がフェデックスで働いていたとき、そこの営業所にビヨンセやブレイク・ライブリーなどセレブのスタイリストをしている人たちがしょっちゅう荷物を届けにきていたのである。

 頻繁に顔をあわせるうちに、そうしたスタイリストたちと友達になったというジェラーニさん。無名のジュエリーブランドにもかかわらず、多くのセレブに着用してもらって人気が出たのは、そのスタイリストたちがこぞってジェラーニさんのジュエリーを使ってくれたことに他ならない。

 思わず、「どこのフェデックスにいたの?」と聞いたら、「54丁目とレキシントンアベニュー」。セレブになかなか使ってもらえないなら、フェデックスに就職し、その営業所に配属してほしいとピンポイントで頼むのも一案か!?
ジェラーニさんには、そんなスタイリストたちに加えて、もう1人強力な助っ人がいる。それは彼女のお母さんだ。ジェラーニさんのお母さんは、30年間もPR会社で働いた経験をもつ。そしてここ10年は、カルバンクラインのファイナンス部門に勤めている。

 つまり、PRの仕方も数字もわかっていて、ファッション業界に豊富なコネクションをもつお母さんなのだ!しかも、お母さんは最初から資金面でも彼女に投資してくれて、経理もみてくれている。こんな頼りがいのあるお母さんをもっているなんて、若手デザイナーとしてこれほど心強いことはないだろう。

 ジェラーニのウエブサイトでは、ジジ・ハディド、セリーナ・ウィリアムズ、タイラ・バンクス、リタ・オラなど、彼女のジュエリーを身につけたセレブの写真がたくさん掲載されている。
セレブが着用しているものと同じものが欲しい!と思っても手が届く値段でないことはありがちだが、ジェラーニの場合はステンレスだから値段は手頃。そんなイメージと値段の絶妙な関係も、ジェラーニに有利に働いているに違いない。






89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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