ニューヨークから繊研新聞へ原稿を送るようになって、27年以上になります。その間、「日本の伝統工芸や伝統的な技術を残していきたいので、アメリカに販路を広げたい」という動きを数え切れないほど見てきました。
そんな私が、最近ちょっとビックリしたのは「鬼瓦」。え、鬼瓦もアメリカに進出したいの?そこまできたか!と正直、思いました。
アメリカで鬼瓦の需要があるとしたら、そこまで内装にこだわりたい日本食レストランかと思います。あとは、和風の旅館をやるという話があったり、日系企業や日本のカルチャーを紹介する施設で飾りたいというところがあれば、という感じでしょうか。
日本の住宅の洋風化に伴い、瓦の需要は減少しているとのこと。伝統を守るため、海外に販路を求めるに至ったわけです。
その鬼瓦の展示会は、「グローバス和室」というマンハッタンにある純和風のイベントスペースで少人数の招待客に向けて行われました。
そこで目にしたのは、すべて縦9センチ、横11センチの小さいサイズの鬼瓦。メーカーの新東株式会社(愛知県)は、これに「鬼瓦家守」のブランド名をつけ、「邪気を払うインテリア商材」として売り込みたい考えです。
展示された9つの鬼瓦は、それぞれ異なる鬼師(鬼瓦をつくる職人)によってつくられていて、それぞれに特徴があります。例えば、萩原尚さんによる三面鬼面は、正面だけでなく左右にも顔がついています。「隙がない」ことを意図したとか。なるほど~
ちょっとひょうきんな表情だったり、笑顔の鬼瓦もあります。展示会では、それぞれの鬼瓦と作家を紹介する英文のパンフレットが用意されていました。アメリカ人はこうしたストーリーを非常に喜ぶので、ものづくりの背景にあるストーリーを全面的にアピールすることは大変いいと思います。
ものづくりの現場を紹介する動画も流していました。
「邪気を払う」「家を守る」というコンセプトは、風水に関心のある人などにウケる可能性はあるように思いました。
新東株式会社の石川達也代表取締役社長はこれらの鬼瓦を某パーティーに持参してアメリカ人たちに意見を聞いたところ、「キュート」「スケアリー(怖い)。でもカワイイ」と言う若者が多かったそうです。「こわカワイイ」(死語?)という感覚なのでしょうね。
でも、インテリア商材として売り込むにはやはり需要が小さ過ぎるのでは、という気がします。厄除けのお守りになるのであれば、ブローチとかペンダントなど、身に着けられるサイズでできないのかなぁと思ったら、このような磁石をつくることは可能と見せてくださいました。
ただ、あの精巧な鬼の面をこのサイズで入れるのは無理だそうです。これを見ると、あの鬼の面の方がやはり味わいがあっていいなぁと思いました。それに、鬼面だと、スカルと同じような感覚で見てもらえる可能性はあるように思います。
需要が減少しているわりには、若い鬼師志望の人たちはそれなりにいるそうで、資格を目指して現在修行中の22歳の女性もいるそうです。若い人、しかも女性でもつくりたいと思う人がいるのであれば、何か将来に希望がもてるのかなとも思いました。
例えば、マドンナとかレディガガとか、そういうセレブに家に飾ってもらい、インスタにのせてもらう。「キュートでスケアリーだけど、厄除けの意味がある」ということをアピールしてもらえたら人気が出るかも!?
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)