傘作家の飯田純久が主宰する「イイダ傘店」(翳)は今年で20周年を迎えた。自らのスケッチを元にオリジナルのテキスタイルを作り、一本一本を手作りする傘は、物作りの現場をつなぎ、出会った人の心を晴れやかにしながら成長してきた。春と秋に各地で実施する受注会で販売し、持続可能な物作りと商いの在り方を築く。
生地を載せる形
飯田が傘を始めて作ったのは多摩美術大学の在学中だ。テキスタイル専攻で染色や織りなどの基礎を学び、4年生の制作課題で取り組んだ。00年代前半の当時、友人など周りの学生の多くは洋服を作りたがり、傘を選ぶのは珍しい存在だったが、「単純に生地を形にするものとして面白いと思った。服作りのように気張らなくても、藍染の布、刺繍の布、手織りの布を載せられる形」に魅力を感じたという。