バイアールによる発表となったサルバム(藤田哲平)は、3年ぶりとなる東京でのファッションショーを母校の文化服装学院で行った。一部のアイテムを学生らとともに製作し、ショーの運営もともに行うことで、学生のスキルアップにもつなげようという意図がある。これまでパリ・メンズのプレゼンテーションでもメンズとウィメンズを交ぜて見せてきたが、この春夏は本格的にウィメンズをスタート、その最初のショーとなる。
ポケットやパンツの裏地がアクセントとなるスーツ、ステッチワークを利かせたワークウェア、ブランドのアイコンともいえるアイテムは健在。そこにカムフラージュとハイビスカスを重ねた柄のセットアップやジャカードで作ったタイダイのような柄のアウターがアクセントとなる。軽さを意識してジャケットはゆったりしたフォルム、セーターも穴が開いてアブストラクトな存在感を放つ。
ウィメンズもメンズと同じ素材がベースとなる。ピンストライプのスーツ地で作るタンクドレスやハンカチーフヘムのスカート、胸元にスモッキングを入れてギャザーを寄せたシャツドレスといったアイテムが揃う。透け感のあるペーズリーのドレスをストライプTシャツとレイヤードするスタイルが、軽快なリズムを生み出す。
初期衝動の切迫感で駆け抜けてきたこの10年、後輩の成長を配慮するようなデザイナーへと成熟した。藤田のいら立ちや焦燥感がサルバムの放つパワーとなってきたが、大人のデザイナーとなった今、これからは何を基軸にデザインしていくのであろうか。
(小笠原拓郎)