【ニューヨーク=杉本佳子通信員】スワッチブック(米カリフォルニア州アーバイン)が、全額出資子会社の日本法人、スワッチブックジャパンを東京・丸の内に7月開設した。日本法人の社長は本社のヤザン・マルコシュCEO(最高経営責任者)が兼務する。繊維素材の3Dデータのプラットフォームを構築し、業界のインフラになることを目指す。
スワッチブックは17年に創業した。25年間、3D業界でキャリアを積んできたマルコシュ氏がファッション業界における無駄に気付き、この業界のマテリアルサプライチェーンを改革しようと挑戦を始めた。その後、ターゲット、メレル、アディダスなどの大手小売店やブランドから「こういうものがあったらいいのに」というニーズが寄せられ、創業に至った。
素材ユーザーとしてまず大手企業が同社のサービスを利用するようになり、欧米の著名ブランドとのグローバルビジネスの実績を経て、迅速に認知度を高められたことが強みといえるだろう。創業4年目で黒字化できたことも、そうした背景が奏功したと思われる。現在、ニューバランス、スペリーなど30~40のブランドと170以上のサプライヤーが参加している。
スワッチブックはキーワードを「公共性」とし、業界の国際的インフラを目指している。スワッチブックのプラットフォームによって、無駄なサンプル資源と作成時間を75%削減できるとしている。
スワッチブックは現在、10万点以上の繊維素材の3Dデータを保管し、米国の基準に沿った高度なITセキュリティーを通じてブランドとデータ共有している。iPadプロ専用アプリをアップルと共同開発し、移動中もアクセス可能にした。ブランド側は生地を製品にのせた時のイメージを確認したり、伸びや厚みが分かるビデオを見たり、スマートフォン上で柄の大きさを変えたり、VR(拡張現実)で見たりできる。
検索は色や混率などの他、どこかで見かけたマテリアルの写真を撮って、それを元にビジュアルサーチすることも可能だ。色はパントンの番号などユニバーサルな標準を元に確認する仕組みだが、実物スワッチをリクエストすることもできる。
テキスタイルサプライヤーは、30以上あるスワッチブックのサービスセンターにマテリアルを提供する。サービスセンターはマテリアルをスキャンし、3Dデータ化し、物性やビデオのデータも含めて一つのパッケージデータとして完成する。日本にも9月にサービスセンターがオープンする予定だ。
スワッチブックジャパンの運営責任者の花岡千賀子氏は、「新しいマテリアルが必要な時に行く場。マテリアルのグーグルになりたい」と語る。日本は特にグローバルビジネスに対応しているDX(デジタルトランスフォーメーション)が遅れていることから、ジャパン社の設立により、まず最も無駄が多く改革の難しいフットウェア、アパレル全般のマテリアルを中心にスタートし、バッグ、アクセサリー、インテリア、工業製品を含めた他産業へ広げていきたい考えだ。
ジャパン社設立にあたり、テキスタイルサプライヤー側のメンバー企業として、ヤギ、瀧定名古屋、サンウェル、岡本テキスタイルが参加した。