《スタンス》シンクス・ドット・デザイン 澤柳直志さん

2018/11/21 11:00 更新


 大学在学中にブランドを立ち上げ、東京コレクションのみならず海外でも作品を披露してきたデザイナーの澤柳直志さん。最近は、リクルート出身者が立ち上げた会社に籍を置き、国内企業向けにデザインやディレクションを提供している。

 一方で、足しげく通う中国でのビジネスにも可能性を感じており、過日開催された上海ファッションウィークにも出展し、休止していた自分のブランドを再始動させた。ライフワークである自らのブランド育成と会社での請負仕事の事業化の両面で、日中を行き来する日が続きそうだ。

(永松浩介)

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◆自分をパンクさせる

 知り合いだった創業者に誘われてシンクス・ドット・デザインに参加したのは2年前。人形の「バービー」と協業した洋服やデザイナーの鈴木ヒカリさんと協働する「リヒト・ステール」を東京コレクションで発表したり、子供服ブランドのディレクションを手掛けてきた。

 東レの素材ディレクションなども行っているほか、来春には大手音楽レーベル所属のタレントをメインに据えるブランドを東レ・ディプロモードと始める。東レの高機能クリーニングクロス「トレシー」の派生商品であるあぶらとりクロス「テカリサラリ」の刷新を手伝い、現在も販路開拓や事業提案をしている。

 企業からの依頼は一様ではないが、自らと、業務委託している複数のデザイナーを中心に仕事を回している。企業の外注化の流れもあり、仕事は増えているという。「今年は自分もパンクするぐらいまでやり切りることを課しています」。最近も名古屋のバッグメーカー、松本や大手下着メーカーの仕事を受注した。

◆中国との架け橋に

 一方、中国との関わりもここ数年で増えている。昨年、欧米の有名ブランドを縫っている香港の縫製工場、コングループ(工場は中国)と組み、「アニパ」を立ち上げた。「上質な素材も使えるし、クオリティーは全く問題ない。規模感もあるし競争力はある」。今春には中国文化庁が中国文化センター(港区)で開いた展示会にもアニパや自分の協業作品を出した。

 10月には上海ファッションウィークの「オンタイムショー」に「ナオシ・サワヤナギ」で出展した。「自分のブランド育成はライフワーク。色々な販路を試しながら、日本とは異なるビジネスのあり方を試したい」。半年ごとのコレクション披露という従来のあり様とは異なるアプローチを探るつもりだ。

 今回は自分のブランドと、飯田繊工(大阪市)、中国企業のストーフィ、イクシーとそれぞれ協業した作品群を披露。「とにかく来場者が多い。その場でオーダーも入り、卸売価格で150万円ほど受注した」。

上海の「オンタイムショー」で久しぶりに自分のブランドを披露した

 国内のファッション市場は縮んでいるうえ、低価格市場が大部分を占める。中小デザイナーの売り先であるセレクトなど大手小売業の店頭はオリジナルが増えているから、中小のクリエイターの居場所は年々小さくなっている状況だ。とはいえ海外、とりわけ中国に目を向けると、ファッション市場はまだまだ拡大している。市場開拓は簡単ではないが、中国企業との付き合いも増えており、現地の大手ECモールへの出店も検討している。

 中国は投資が活発で、最新の機器を導入している物作り分野でも先を走っており、「日本はもうファッション大国ではない」と感じている。「糸をスキャンしてゲージなどを設定すれば3Dで製品のあがりを確認でき、2日後にはサンプルがアップする」。現地で見た最新の物作りに驚いたという。「中国のスピード感は圧倒的。そこに身を置くのはエキサイティング」と話し、将来の移住も視野に入れる。

 国内企業との協業が増えると同時に、中国企業と接触する機会も多いことから、今後は協業先の製品を中国に持っていくこともありそうだ。「日本と中国のブリッジになれば」と言う。

 日本では、このほど東京都世田谷区に開かれたクリエイターが集う複合スペース「インディペンデンツ・トーキョー」にも参加。多くのアーティストやスタイリストなどが所属するため、大抵のことはこの場所でまかなうことができるという。「世界を目指すというのがテーマだから、今の自分の方向性と合っている」と話す。

澤柳直志さん


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