デザイナーの鶴田能史さんは今春、「ピープルデザイン」の発想を生かした「テンボ」を立ち上げた。個性あるデザインを考えつつ、「年齢や体形、障害にとらわれず、世の中の全ての人がおしゃれを楽しめる洋服」を様々な角度から試みる。メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク東京では単独のショーを行い、より多くの人に身近な距離でファッションの魅力を伝えている。
自己研鑽の日々
03年に文化服装学院のデザイン専攻課を卒業してヒロココシノに入社した。シーズンコレクションの制作などに携わっていたが、「会社に属しての仕事にとどまらず、自分で何かできるようになりたい。自己研鑽(じこけんさん)して成長していかないと」と数年後に退社。「量産や低価格のビジネスも見てみよう」と子供服のODM(相手先ブランドによる設計・生産)企業に再就職して経験を積んだ。11年にはこれらの知識やノウハウを生かすべく、二葉ファッションアカデミーの専任講師に着任、「人に分かりやすく伝える術を学びながら」教員生活を送った。
転機はその頃の体験だ。「祖母が車椅子の生活を送っていて、ユニバーサルデザインの服を着せようとしたが、ボトムが着せられない。座ったままで着せやすいおしゃれな服が無かった」と振り返る。「ユニバーサルデザインの全盛期と言われても、選択肢は限られ、10年前と変わっていないんだなと。有名なデザイナーブランドもやりたがらないでしょう。時間も手間も掛かりますから」。誰もやらないからこそ自分たちでと、在職時の14年、学校初のオリジナルブランドとしてユニバーサルデザインの「ハハ」を作り上げた。
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