《視点》バリアを壊す

2020/11/20 06:23 更新


 取材で、車いす生活者の視点でバリアフリー推進のために活動する加藤健一さんの話を聞く機会があった。

 21歳で筋ジストロフィーになってから車いす生活が始まり、「街に出ると段差や階段が多く、大多数の人には当たり前なのに、できないことが増えた」という。しかし「あきらめなければならない事が多いと悲観し、ひきこもるより、壁を壊して障害者や高齢者も楽しめる社会に変えたい」と、バリアを壊す活動を開始。車いすでもパラグライダーや海、雪の日にはカマクラも楽しめる観光事業、車の軽整備の障害者向け就労支援事業など広く手掛ける。

 「おしゃれもあきらめてほしくない」と丸安毛糸などの協力を得て、車いす向けジーンズも1年半前に共同で開発。「不可能を可能にする前向きな発信や行動で、障害をもつ子供たちがワクワクできる社会を作りたい」と、熱い思いを周囲の人に伝え、夢を一つひとつ実現してきた。「病気は進行していても、振り返った時に満足できる人生を送りたい。毎日、ワクワクして楽しい」と加藤さん。

 暗い話題が多い今、夢をかなえるために障壁を壊して前進する姿勢に共感する人も多いはず。その姿勢に学び、ファッションの力で共生社会の実現を進めていきたいものだ。

(陽)



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