先日、あるメンズセレクトショップのバイヤーを取材していた際、「同じカジュアルウェアを作り、売っているにもかかわらず、手頃な価格帯のオリジナルブランドが苦戦する一方、やや値は張るものの好調を維持するドメスティックブランドがある」という話題に及んだ。
そのバイヤーいわく、「独立したデザイナーたちは、個人のフィルターを通して、『世の中にこんな物がない、足りない。だから形にしてみよう』と服を作る。潜在的な需要を探り、そこに対して新たなクリエイションを生み出す。そんな商品が共感を呼び、人をひきつける」というのだ。
一方、「企業に属するデザイナーは、顕在化しているトレンド情報や消費者動向を踏まえて服を作る。その方が上司の理解も得られやすいし、社内のプレゼンテーションも通るからだ」と話していた。
マーケットインが悪ではない。徹底的に顧客の声を聞き、意見や要望を反映した商品作りで成功している企業もある。
服があふれ、さらに着飾る機会も減った今、財布のひもを緩めるのは、かゆいところに手が届く服のように思う。
(友)