「働き始めて30年くらい経ちますけど、今が一番わくわくしていますよ」というのは、ある小さな製造業の社長。その会社は世界的にも希少で、良質な素材を安定供給できる。同社も昨春夏の受注は振るわなかったが、市場で存在感を発揮できる商品の開発意欲が高い企業からの大口の受注が舞い込むようになってきた。新規事業も始まるようで、「話したいけど、まだ話せません」と楽しそうに笑う。
この1年、話題のほとんどはコロナ禍によるマイナス影響について。それは至極当然のことで、日常になっていたし、「そうですよね…」なんて共感しながら取材をしてきた。だからこそ社長の言葉がとても新鮮で、刺さった。
業種は違うが、小さな輸入卸業者の話。消費が止まった昨春のタイミングで自社ECサイトを開設し、SNSを始め、クラウドファンディングにも挑戦した。すると、これまでのモヤモヤが晴れたという。
自分たちがいいと思ってバイヤーに提案した物の発注が少ないことが多々あったが、あるユニークなバッグの予約販売を呼びかけると、数百個が2日間で完売。今もこうした実績を積み上げ「自分たちの市場を見る目は間違っていなかった」と自信を深めている。厳しい局面にも好機はあるものだ。
(嗣)