「記事には増益と書かないで」――服飾副資材業界の担当になり、取材先からこう言われることがよくある。「お客さんに『もうかってんだから値下げしてよ』『値段上げなくていいでしょ』と言われる」そうだ。商談中の冗談めいたやり取りもあるだろうが、ずっと違和感がある。
副資材は一つが数円程度の物や1円に満たない物もある。数量がまとまればそれなりのコストにはなる。発注側のコストを抑えたい理屈は分かる。とはいえ、副資材企業は、新商品の開発や改良、品質保証のための管理業務、安定した供給網の整備、海外も含めた緊急対応などに努めている。手のかかる付帯業務も含めた仕事の積み重ねでやっと出た利益だ。ましてや昨今のコスト高で利益を出すことはこれまで以上に難しくなっているはず。 一方で発注側であるアパレルメーカーや小売業者もコスト高は同じ。市況も良いとは言えない。互いの状況を十分に理解した上で、歩み寄る価格交渉はあってしかるべきだろう。しかし、短絡的な値下げ要求や値上げに応じない姿勢は、たとえ冗談半分だったとしても礼を欠いている。
(嗣)
