4~6日に開かれた「ファッションテックサミット#001」の核イベントとなっていたのが、プログラマーやプランナー、ファッションデザイナーらが参加した「ファッションテックハッカソン」だ。参加者は5チームに分かれ、「未来のファッション」をテーマに、2日間にわたって新サービスやプロダクトの開発を競い合った。
◆アバターで買い物
5チームのうち、上位3チームが揃って取り入れていたのが、VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)技術だ。優勝したVRソフトウエア開発者、中ノ瀬翔さんの作ったサービスは、ヘッドセットを取り付けると眼前に洋服売り場の光景が広がる。自身の体形をもとに作ったアバターで商品を試着し、購入が可能。同じVR空間の中にいる他の人のアバターと、ファッションをきっかけにコミュニケーションすることも可能だ。
2位もVR空間の中で買い物をするサービス。地方客や海外の消費者などを日本の都心百貨店やファッションビルの店頭とリアルタイムでつなぎ、VRによって物理的な距離を飛び越え、買い物を楽しむような仕組みだ。3位は、飛行機のファーストクラスの機内販売として、ラグジュアリーな体験をVRで提案した。
◆その先の交流も
結果的にVR技術の広がりや可能性を感じさせるハッカソンになった。「スマートフォンが当たり前になったように、数年後にはVR端末を一人一台持つ時代が来る。今は技術はできているけど、それをどう生かすかがまだ確立されていないので、ファッション分野でも生かせると思った」と優勝した中ノ瀬さん。「VR空間の中で単に買い物をするだけでなく、その先の交流など、ファッションの楽しみの部分も提案していた点が良かった」(審査委員の小川徹NHKデジタルコンテンツセンター副部長)と評価された。
今回は、エンジニアやプログラマーなど、テクノロジー側からの参加者が圧倒的に多かった。ファッション側から参加していたのは、「バルムング」デザイナーのハチさんら。
「今回のハッカソンは、小売りや体験といった方向へ引きずられたが、回を重ねる中で、ファッションそのものを革新するような内容につながっていくのではないか。今回のサミット開催で、ファッションとテクノロジーのコミュニティーができたことが成果として大きい」と、会場となったデジタルハリウッド大学の杉山知之学長。