「ジーンズが売れない」と言われるなか、気を吐いているのが、大貫達正さんがデザイナーを務めるジーンズ主力のカジュアルブランド「ウェストオーバーオールズ」だ。17年春夏のスタート以来、大手セレクトショップから個店専門店まで次々と卸し先が広がり、年間売上高(小売価格ベース)は数億円規模に成長している。女性客の獲得から始めたことや日本人が着用した際にきれいに見えるシルエット、はきやすさなどが幅広い層に支持されている。
◆厳しさの中にチャンス
ジーンズが主力のブランドは多数存在するが、国内では00年代以降、経営が厳しくなったブランドも多い。そんな状況のなか、なぜジーンズブランドを立ち上げたのか。セレクトショップのオリジナルブランドのデザイナーやフリーランスデザイナーとして10年近く活動する中、「流行を追いかけ、売るためだけの物を作ることに満足できなくなった。年齢を重ね、服に対する価値基準のハードルが高くなり、本物志向の物作りに立ち返った」という。そこで焦点を当てたのが、「幼少期から好きだった」というジーンズだった。
すでに数多くのジーンズブランドが流通している中でも、大貫さんの目には「ビンテージ好きに向けたジーンズとファッション好きに向けたジーンズ。それらの間に位置するブランドが空いている」と映った。
◆今までにない感覚伝える
新興ジーンズブランドとして支持されるために狙ったのが、女性客の獲得だ。ジーンズはユニセックス展開で、基本的にウエスト24~36インチで1インチ刻みで揃えている。シーズンごとのルックブックのモデルに女性を起用するとともに、肌を露出したセクシーな要素も織り交ぜることで、男性的なジーンズが際立つように演出した。「みんながやらないことを思い切ってやることで、ウェストオーバーオールズのイメージを刷り込もうとした。意識的にギャップを作ったことで、消費者の心が動いたんだと思う」という。
見せ方だけでなく、もちろんシルエットやはき心地も良い。日本人の体形を分析した上で、パターンを工夫している。一般的なジーンズに比べて、膝の位置を変えることでO脚に見えにくくしたり、お尻の部分に切れ込みを入れることでお尻回りにゆとりが出るようにするなどしている。
これらの要素が受け、女性からの人気が過熱。近年は男性客も増えている。老若男女で幅広く支持されているが、中心客層は30~40代。人気品番はストレートタイプの「801S」(2万円前後)やブーツカットタイプの「817F」(同)だ。
現在の卸し先口座数は国内を中心に80~90。19~20年秋冬物からはアジアや欧米にも卸販売を始めた。20年春夏物は、デニムの端をオリジナルのテープでパイピングした「スペシャルセルビッジ」シリーズの商品を拡充する。