昨年の12月の初めに体調が悪くなって近所の病院で診てもらったところ、インフルエンザA型と診断された。鼻水とせきと微熱程度の症状が出ていただけなので、普通の風邪だと思い込んでいたため、驚いた。
【関連記事】演劇祭の街で 空気に溶け、発光するもの
通常に戻ったはずが
インフルエンザの増殖を抑えるゾフルーザという薬を処方されたら、次の日には平熱に戻った。せきと鼻水がしばらく残ったが、インフルエンザの強烈な症状は被らずに済んだ。とはいえ発症の翌日から5日間は外に出てはいけないため、イベントや通院の予約、食事の約束などいくつもキャンセルした。
そんな自粛期間がやっと終わり、通常通り活動を始めた矢先、マンションの階段を踏み外して、左の足の親指を骨折してしまった。転倒の10分後くらいにみるみる腫れ上がり、指を1ミリ動かすだけでも激痛が走った。普段は意識していなかったが、足の親指は歩行にとってなくてはならない部位だった。最初は、一歩も歩けなかった。
松葉杖を病院で借りて帰ったが、いつもの3倍くらい歩行に時間がかかるので、少し道幅のある道路は、渡りきらないうちに青信号が点滅を始めてしまう。焦った。階段はもちろん、ちょっとした段差でも、上るのも下がるのも、一苦労である。またしてもいろいろキャンセルせざるを得なくなった。
黙々と頑張る体
骨折を一日でも早く治したいと思った私は、連日ネットで情報を仕入れていた。骨折した部位があんなに腫れ上がるのは、骨を修理するための材料として血液が使われるからとのこと。腫れるのも痛いのも、治癒に必要な過程だったのだ。体は黙々と頑張ってくれていたのだな、と思う。
松葉杖は1週間ほどで必要なくなったのだが、無理をすると骨が変な形にくっついてしまうこともあるらしいので、おそるおそる日常を取り戻しているところである。
1月2日は長女の新居に集まることになり、埼玉県西部まで夫の運転する車で向かった。持ち寄った食べ物や飲み物を食したり、娘夫婦の用意してくれた張り子の絵付けをしたりと楽しい時間を過ごしたあと、夕方早々に帰宅した。降雪予報が出ていたからである。
曇り空からみぞれが降り出し、新座市のあたりで雪が本格的に降り出した。雪国のようにふぶいている。枯れ木が雪をまとって花が咲いたようになっていた。道は渋滞し、なかなか先へ進めない。
休憩で立ち寄ったコンビニの駐車場も10センチほど積雪していた。医療用サンダルを履いた足で、その雪をそっと踏んだ。朝は快晴だったのに。空も体も、時に予測不能になる。急な変化も受け止められる心身でありたい。
(歌人・東直子)
