日本発のブランドに特化したポップアップストア(杉本佳子)

2021/12/13 06:00 更新


 アメリカに販路を広げたい小さい雑貨やジュエリーのブランドにとって、ニューヨークは有難い市場なのではないだろうか。ポップアップとはいえ、日本人によるブランドを扱う売り場を定期的に設ける人たちが複数いるからだ。ホリデーシーズン真っただ中の今、日本ベースのブランドとニューヨーク在住の日本人によるブランドをミックスしているポップアップショップがいくつかあるが、the ARCADE JAPANは日本発のブランドに特化している。2017年から年3回、4月、8月、ホリデーシーズンに運営してきたが、コロナがあったため、今回は2年ぶりにノリータに店を開いた。11月24日から12月22日まで営業している。

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 期間中、35ブランドを入れ替えしながらおいている。運営するCOSATEN LLCの福岡美菜登さんに何が売れているか聞いたところ、まずかえってきた答えは「テキスタイル」だった。SOMEYA SUZUKIのふろしきバッグは、日本らしいことが好まれ、ギフトとして買う人が多い。

 46/D(福岡)は久留米絣のエコバッグの他、ハンカチや扇子もあり、ブランドのコンセプトを説明すると興味をもって買っていく人が多い。Shinra(岐阜)の日本製シルクを手織りしたスカーフは、出してすぐ売れた。長年日本のシルクのスカーフを使っていて新しいのを探していたというお客さんが、クオリティーと色を気に入って買っていったそうだ。

 テキスタイル以外ではジュエリーが人気。BELLEZZA(大阪)の耐熱ガラスに金彩を焼き付けたイヤリング、Atelier Sou(沖縄)及びGood Morning JEWELRY(愛知)のシンプルな指輪など、シンプルなジュエリーが比較的売れている。雪しろ屋(神奈川)の14Kにパール、クリスタル、レジンを組み合わせたジュエリーも、アメリカ人から見ると日本的でディテールに凝っていると受け取られるそうだ。Kokoiro(京都)の凹凸のあるオーガンジーを染めてつくったネックレスやイヤリングは、年配のお客に好まれている。

BELLEZZA
Atelier Sou
Good Morning JEWELRY
雪しろ屋
Kokoiro

 Hitomi Hashimotoの、細かい葉脈を入れた18Kまたはスターリングシルバーのジュエリーも好評という。

 気仙沼の鮫の皮を使ったAtelier Sharkの財布やポシェットは、近畿大学短期大学部頭師暢秀ゼミナールの大学生と共同開発したもの。持続可能な社会を目指し、気仙沼の復興の一環として行われているプロジェクトだ。

 ウインドーディスプレーには、日本で入手したアンティークの蕎麦猪口も!とはいえ、大方のお客さんは特に日本が好きというわけではなく、入ってきてから日本のものと気づく。白人とアジア系アメリカ人が多く、20代から30代が特に多い。客足はコロナ前にはまだ戻っていないが、天気の良い週末は混雑し、常連客もお知らせすれば来てくれるそうだ。

 福岡さんはオクラホマ州立大学を卒業後、ニューヨークに移り住み、ロバートゲラーやニューヨークのショールームで経験を積んだ。日本にいったん帰国して、東京ガールズコレクションの運営・企画・宣伝に携わり、ニューヨークに戻ってからブランディング会社のCOSATEN LLCを設立。日本のブランドや企業の米国進出をサポートしてきている。the ARCADE JAPANは「どこに置かれるかではなく、誰に届けるか」を重要と捉え、日本人クリエーターたちの可能性を広げたいという思いをベースに、日本の商店街にいるような環境でニューヨーカーに直接届けるというコンセプト。2022年からは、アメリカのブランドの日本・アジア市場での代理店も始める予定だ。

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89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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