祇園ない藤がNYで展示会(杉本佳子)

2022/04/22 06:00 更新


 1875年創業の祇園ない藤が、海外で初めての展示会をニューヨークで5月28日まで行っている。場所は、マンハッタン・フラットアイアン地区にあるギャラリー兼レストランの「ザ・ギャラリー」。昨年他界された女将、内藤鶴子さんが愛用されていたアーカイブの草履と、1点物の誂えの草履をメインにディスプレーし、日本の伝統工芸を駆使した草履の芸術的美しさをアピールしている。アーカイブの草履の鼻緒には、フランス刺しゅうや古い着物あるいは布団の生地などが使われている。

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 1点物の誂えの草履も芸術品のように美しく、思わず目を奪われる。展示会にあわせてニューヨークに来られた5代目当主の内藤誠治さんは、北大路魯山人の器を引き合いに出し、「芸術品として飾って使わない人もいれば、それを使う人もいるかもしれない」と、この草履の立ち位置を説明した。日本円で1点20万円から40万円するもので、観賞用として買いたい人がいればそのままお持ち帰りいただき、履く前提で買いたい人がいたらお客様の足に合うように誂えて販売するという。カラフルでシンプルなタイプは、洋装と合わせてもお洒落で可愛いくなりそうだ。



 アーカイブの草履と1点物の誂えの草履に加え、9年前に始めたコンテンポラリーコレクションの「JOJO」「KAPPO」「KODORI」も持ち込まれた。壁には、洋服と合わせたコンテンポラリーコレクションのイメージ写真が飾られている。


 内藤さんが9年前にコンテンポラリーコレクションを始めたきっかけは、震災だったという。20代の頃から、草履や下駄を履いてくれる人を増やすために知恵を絞り素材と手法を工夫したいと思っていた内藤さんは、震災を体験した時に、「いつかってないなとつくづく思った」と語った。

5代目当主の内藤誠治さん

 その後、鎮魂の意味を込めてインドの聖地に行くグループに参加。高温多湿のインドでは、大事な場所にあがるときは靴をぬぐ。たくさんの脱がれた靴を目にした内藤さんは、「何100もの履物があるのに、1つとして素敵、欲しいと思う履物がない。日本中の下駄屋がなくなっていく中で、知恵を使って履物をつくり直す仕事ができたら、それはいい仕事ではないか」と思ったそうだ。

 帰国してから開発を始め、1年くらいで完成したのがJOJO。いくつものデパートでポップアップショップを展開し、広めてきた。買うお客さんは10代から80歳までと幅広いが、特に多いのは30代から50くらいまで。2年前までは男性が7割を占めていたが、今は半々に近づいてきたという。

JOJO

 内藤さんは、コンテンポラリーコレクションを「日常生活を豊かにしてくれるものをつくっている」という認識で手掛けているそうだ。「洋装和装にこだわらず、自分ならではの表現ができたら、自分がアートや文化をつくっていけたら、それは素敵なこと」という想いを込めている。

 かかと部分がないKAPPOはインナーマッスルを鍛えられ、体幹が整い、姿勢がよくなり、よく眠れるようになる健康効果も期待できる。実際試着してみて、かかとがない分、つま先に重心がいき、足指が鍛えられると実感した。

KAPPO

 JOJOもKAPPOも、親指と人差し指の間にあたる前坪が赤ちゃんの哺乳瓶に使われているものと同じシリコンでできていて、非常にソフトな感触が嬉しい。私は今までずっと、親指と人差し指の間に挟むものがあるタイプは草履、ビーチサンダル、サンダルにかかわらず、すべて痛くて苦手で履けなかった。ところがJOJOもKAPPOもそうした痛みが感じられず、非常にビックリした。JOJOは色も可愛いものが多く、普通のサンダル感覚で履けそう。この夏は、JOJOをサンダル代わりに履いてみようと思う。

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89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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