アメリカで日本の商品を売る DECO BOKOのケース(杉本佳子)

2022/12/26 06:00 更新


 日本発の商品をアメリカのバイヤーに繋げるB2BコマースのDECO BOKOが、昨年1月以来、ソーホーのギャラリー、NOWHERE(ナウヒア)で冬と夏に期間限定のショッピングイベントを開催してきた。今月9日から24日まで開催した「ホリデーマーケット」が、今回で5回目となる。1回目は24ブランドでスタートし、今回は28ブランド。回数を重ねるごとに、ブースの大きさを増やすブランド、日本から参加するブランドが増え、スペースの関係上お断りするブランドも出てきた。DECO BOKOを主宰するレイエス真梨子さんに、2年間やってみえてきたことや今後の展望を聴いてみた。

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 特に印象的だったのは、日本ベースのブランドとニューヨークを中心にアメリカに拠点をもつ日本人がやっているブランドを混ぜたことの相乗効果だ。アメリカにある日本のブランドは既にお客さんがついているので、DECO BOKOのリアルイベントに出展すれば、そこに既存のお客が来てくれる。そのお客さんたちに、日本から出展しているブランドの商品を見てもらえる機会にもなる。アメリカで既にビジネスをしている日本人たちは、アメリカの市場をよく知っている。実際、日本から商品を送ってくるブランドの中には、ニューヨークに住んでいたら「こういうのは冬のニューヨークでは売れない」とすぐわかるものを相談なく送ってきたケースがあったという。アメリカに拠点を置くブランドであれば、在庫補充も可能だ。今回のホリデーマーケットでは、アメリカベースのブランドは40%、日本ベースのブランドは60%を占めた。

 今回最も売れたブランドも、ベスト3はすべてニューヨークのローカルなブランドだった。なおかつ、1位と2位は前回から扱うようになったフード。やはりフードはお客を惹きつけ、楽しさをアップする効果があるといえるだろう。

 1位は、ビーガンチョコレートのNOE NO OMISE。見た目が美しく、味も美味しい。乳製品が食べられない人も安心して食べられるチョコレートは、ギフトとして送るのも安心だ。

 2位は、お椀に入れて熱湯を注げば味噌汁ができるMISOMARU。手作り感があって、洗練されているインスタント味噌汁だ。見た目がきれいで、そのままギフトになるケースに入っている。

 3位は、クリスマスリースやコケ玉、お飾りのようなフラワーデコレーションを出したSUIRYU。お飾り風のものとコケ玉は和風でありながら和風過ぎないデザインで、特に人気があった。

 ファッションや繊維関係で特に人気があったのは、タキヒョーのPAPER PROJECT。1回目から毎回出展してきて、リピーターが多い。「持っているけど、すごくいいのでまた買いに来た」というお客が多いそうだ。今回は、洗濯機で洗って乾燥機にも入れられるウールのソックスの人気が高かった。ウールのソックスを探しているお客さんは結構いたという。

 他には、ニューヨークのファッション小物ブランド8.6.4のカシミアのビーニーが、素材の良さで売れた。

 また、京都あさひ屋の風呂敷はほぼ完売。柄が非常に可愛いことが人気の理由だ。風呂敷や手ぬぐいは、以前は「これはどうやって使うの?」と聞かれたが、今は何も質問しないで買われていく。

 リアルのショッピングイベントには、DECO BOKOの卸売り先のバイヤーたちも来る。普段は手に取ってみる機会のない商品を見ることができるし、会場でDECO BOKOが扱っている他の商品も見ることができる。イベントが終わってから、バイヤーとブランドが繋がるケースは多い。やる意味の大きなイベントだったのだ。

 会期中、土日の夕方から夜にかけては「ナイトマーケット」と称し、お酒と食べ物、音楽を提供した。音楽はジャズ、日本人のレゲエバンド、ヒップホップのDJなどを招いてきたが、今回はニューヨークを拠点に世界で活躍するジャズトランぺッターの黒田卓也さんを招き、おでん(有料)と日本酒(無料)を出した晩が最も盛り上がった。

 レイエスさんは、「日本のコンビニっぽくしたかった。いいちことSOTO(大阪なおみがクリエイティブディレクターとして係わる日本酒ブランド)がスポンサーに決まったので、お酒と合ってやりやすくて面白そうという理由で(日本の食文化クリエーター塩山舞の)おでんにした」と話す。

 SOTOは日本人ではない男性が始めた日本酒のブランドだ。ブルックリンのグリーンポイントにある日本食のレストラン、Rule of Thirdsも日本人でない2人の男性が始めた。そうした人々は、オーセンティックな日本のコンテンツをすごく欲しがっていて、レイエスさんは、今後はそういう人たちと組んで、日本のいろいろなものを五感で感じてもらえるショッピングイベントをしたいと考えている。「日本のコンテンツを必要としているビジネスに売り込み、例えば酒屋のイベントを盛り上げるためにお呼ばれされるやり方をとっていきたい。陶器の店、フードコートの一角、ブルックリン美術館など、奇想天外なところでやってみたい」とレイエスさん。意外性のあるスペースで日本のものを集めたショッピングイベント、今から楽しみだ。

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89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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