グッゲンハイム美術館で2つの新しい展覧会が始まった。いずれも、独特の発想と新しい表現が新鮮だ。会期は9月10日まで。
1つは、ザラ・ズィーの「タイムラスプ」。タイムラスプとは、ゆっくりした速度で撮影コマ数を少なくして長時間にわたる時間経過を撮影する技術を指す。その手法をインスタレーションに組み合わせているのだが、その「舞台裏」的装置をすべて見せている。段ボール箱を積み重ねて機材を置いたり、脚立を置いたり、手でちぎった紙を使ったり、扇風機を当てて回転させたりといった手作り感が満載だ。デジタルを取り入れながらアナログ手法をふんだんに組み合わせたマルチメディアのインスタレーションで、どこか温かみのある作品に仕上がっている。
ズィーはボストン生まれのアジア系アメリカ人で、現在はニューヨークベースのコンテンポラリーアーティストだ。ニューヨークのラガーディア空港のターミナルBに備え付けられた、地球をイメージした大きなインスタレーションでも知られている。
もう1つは、ジェゴの回顧展「メジャリング・インフィニティ」(無限大を測る)。ジェゴはドイツ生まれのユダヤ人で、ナチスによる迫害を逃れた後ベネズエラに移住し、1994年にベネズエラで亡くなった。元々、線と空間で構成したジオメトリックなイメージを絵や彫刻で表現していた。
それが、ある時期から織物に発展させていったところが興味深い。細長く切った紙を組み合わせてつくった「Weaving」のシリーズは、織物をこういう風に表現する方法もあるかと改めて気づかされた。ジェゴは一時期ラグもつくっていた。
一番多いのは鉄や銅のワイヤーを使った彫刻だが、特に目を引いたのが「虫」のシリーズ。虫というテーマで、こうしたオブジェをつくる発想が面白いと思った。
グッゲンハイム美術館によると、ジェゴは20世紀後半にラテンアメリカで活躍した最も重要なアーティストの1人でありながら、アメリカでは知名度が低かったという。世界的に著名な美術館がそうした知名度の低いマイノリティーのアーティストにスポットライトを当てるのも、昨今の多様性・包括性の一環と言えるのかもしれない。これからも、ますます知らなかったアーティストを発掘して紹介してくれるのではないかと思うと楽しみだ。
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)