「未来の倉庫業務に関するグローバル調査」 労働力不足とEC拡大が自動化を後押し

2022/10/05 06:27 更新


 コロナ禍によって、サプライチェーンパートナーとの連携やサプライチェーンの可視化の重要性に対する企業幹部の認識が高まっている。物流倉庫現場の労働力不足やEC拡大は今後も継続するとの見方も広く共有され、物流倉庫の施設設備・オペレーションのモダナイズ(近代化)が様々な業界で課題となっている。業務の自動化と現場従業員のEX(従業員体験)向上が、その打開の方向だ。米ゼブラ・テクノロジーズが実施した「未来の倉庫業務に関するグローバル調査2022」の結果から一部を紹介する。

自動化投資を重視

 調査によると、日本を含む世界14カ国の製造・小売り・卸売り・運輸・物流業の倉庫・配送センター運営・管理担当の企業幹部の半数以上が、組織の最大の課題として人材の採用・育成を挙げており、85%が3年以内に労働力最適化を優先する計画だ。

 一方で、倉庫現場従業員は82%が人手不足のなか、「職場にプラスの変化が起きている」と回答した。「労働条件が改善」60%、「テクノロジー活用で仕事が楽に」57%、「柔軟な勤務シフトを可能にするテクノロジー活用」43%などだ。企業は既にテクノロジーを活用したEXの最適化の取り組みを始めている。

 企業幹部が最も望んでいる成果では、「モビリティー(可動性)の最適化」41%が最も多くなった。つまり「全ての従業員がそれぞれの業務に適したテクノロジーを活用し業務手順を遂行できる」状況だ。そして、5年以内に「リアルタイムの可視化により現場従業員が自動化された意思決定サポートを受けられる」状況を期待する企業幹部は69%に上る。

 また、全ての業種の企業幹部は、ECの拡大が長期的に継続するとして計画を立てている。22年の企業ごとの倉庫施設数は平均10.9施設なのに対し、27年は14.9施設に拡大する見通しで、企業幹部の87%が倉庫の近代化プロジェクトのスケジュールを加速させ、62%は既存プロジェクトの近代化・規模拡大のための資金を増額させている。さらに「自動化に投資するメリットが、導入しないリスクをはるかに上回る」と考える企業幹部は82%に上る。

 労働力不足と継続的なECの拡大は、倉庫業務の自動化・最適化と現場従業員のEX向上に向けた投資を加速させる。企業幹部の9割は「倉庫の最適化・自動化ソリューション導入を目指し、5年以内に社外リソース活用の模索を検討する」と回答しており、83%は「ソフトやモバイル端末で従業員の能力を強化することで倉庫自動化をスタートできる」とみている。同様の見方をする従業員は89%に達した。

段階踏んで近代化

 ゼブラ・テクノロジーズは、倉庫近代化の戦略的フレームワーク「ウェアハウス・マチュリティ(成熟)モデル」で、①従業員一人ひとりの生産性向上②チームの生産性とワークフローの適合性向上③モノ・人などの資産の可視化と稼働率向上④リアルタイムなガイダンスと意思決定による業務運営⑤データ駆動型パフォーマンスによる業務運営、の5段階の自動化の戦略モデルを提示しており、企業は「自社の状況を踏まえ、段階を踏んで倉庫の近代化をスタート・推進すべき」(古川正知ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン社長)という。

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