廃棄物ゼロのブランド「ゼロ・ウエイスト・ダニエル」

2019/09/20 10:59 更新


 「ゼロ・ウエイスト・ダニエル」は、ニューヨーク・ブルックリン在住のデザイナー、ダニエル・シルバースタインさんが15年にスタートした。衣料品を製造する際に発生する端切れなどの繊維廃棄物や古着で作るユニセックスのストリートカジュアルで、ポップでカラフルなデザインと一点物の魅力が受け、環境問題に関心のある若い世代を中心に米国で人気を集めている。「ゼロ・ウエイスト=廃棄物を一切出さない」物作りを徹底し、日本など海外でもファンを増やしたいと考えている。

(柏木均之)

市衛生局とも協業

 ダニエルさんは、FIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)でデザインを学んだ後、アパレル産業で発生する繊維廃棄物を素材として独自のデザインの服を作ることを思い立った。色や柄の異なる端切れをハンドメイドで組み合わせたカットソーを数型作り、SNSで紹介したところ、「欲しい」「格好良い」などの反応が多く寄せられ、ブランド化することにした。

 その後、縫製工場から出る裁断後の余った生地や廃棄された端切れなどを使い、パンツやジャケットなどアイテムを増やし、ECとブルックリンの直営店で販売するようになった。現在はリサイクル素材の水着や、ニューヨーク市衛生局との協業商品、廃棄されたレジ袋を使ったバッグなども作っている。

端切れや使用済み衣料をアップサイクルし、ストリートテイストのカジュアルウェアを作っている
ニューヨーク市衛生局と協業で作ったコートは、ゼロ・ウエイストのスローガンをそのまま生かした

海外で卸売りも

 価格は100~300ドル程度で、素材として使う端切れや古着の量に応じて生産量も異なる。Tシャツなどは数百枚単位で作れるが、アウターなどは数着しか作れないものもある。組み合わせパターンは同じでも端切れの色や柄が一つひとつ異なるため、すべてが一点物なのも、人気を集める理由だ。

 今後は海外で卸売りも行う。日本では5月に阪急うめだ本店の「ニューヨークフェア」に参加した。9月には「東京インターナショナル・ギフト・ショー」にも出展。販売パートナーを探しており、日本でももっとブランドの活動を知ってもらいたいと考えている。

異なる色のレジ袋やキャンディーの包み紙などを重ねたシートで作ったバッグも

「サステイナブルなストリート服に共感」 デザイナーのダニエル・シルバースタインさんに聞いた。

――廃棄物ゼロで服を作る理由は。

 この業界で働くようになった時、服を作るのに使う素材の15~20%がゴミとして廃棄されることを知ったり、子供の頃に端切れで妹の人形の服を作っていたことを思い出し、同じ方法で服を作るブランドをやろうと考えた。

 最初はドレスで始めたが、客層を広げたくてカジュアルに方向転換した。廃棄繊維で作るだけでなく、協業商品もあって、ニューヨーク市衛生局と組んで、ゴミ収集などの作業で着る制服を再利用した服や帽子、ブルックリンのゴミ処理施設で、レジ袋を圧縮した生地のバッグも作っている。

――今後の商売をどうしたい。

 ユニセックスでストリートっぽい要素もあるので、米国では「オフホワイト」とか「シュプリーム」が好きなミレニアル世代がウチのブランドを支持してくれている。サステイナブル(持続可能)なアプローチに共感してくれる大人客も多い。こうした傾向は世界共通なので、海外でも何かしら活動をしたいと思っている。

 ECを通じて日本、オーストラリアや南アフリカ、メキシコでもブランドを知っている人がいるので、そうした国で卸売りをやりたいし、それぞれの地域で発生する繊維廃棄物を使って地産地消で服を作ることも考えている。

デザイナーのダニエルさん(右)とブランドを共同で運営するマリオ・デマルコさん


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