人と環境に優しい製品の利用を広げ、一緒に国際社会に貢献しませんか――フェアトレードコットンイニシアティブは、〝国際フェアトレード認証ラベル〟の付いた有機栽培綿製品の企画開発事業を立ち上げた。社会的影響力のある大手企業や百貨店、病院、ホテルなどと組み、普及の遅れている日本でフェアトレードの綿製品市場の拡大を目指す。
大手アパレルで百貨店向けブランドの企画や生産、全体の統括まで任されていた入江英明代表は、「利益重視で生産現場の人を苦しめるファッションのあり方に矛盾を感じていた」という。約5年前にフェアトレードに出会い、「開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入し、立場の弱い生産者や労働者の生活改善と自立を目指す事業を日本で普及したい」との思いから4月に同社を設立した。
国内で流通しているフェアトレード製品はコーヒーやチョコレートが主体だが、アパレル出身の入江代表は有機栽培綿に着目した。「生産工程が複雑な綿製品でも、履歴管理が明確で導入しやすいフェアトレード製品があれば、取り入れて社会貢献したい企業は増えている」と分析する。
事業化に当たり、国際フェアトレードラベル機構の監査を受け、インドの綿栽培農家から紡績や染色、縫製、加工まで供給の全工程に対し、認証を受けた。合わせてオーガニックテキスタイルの世界基準GOTSの認証も取得し、二つの認証ラベルが付いた信頼できる製品として、自治体や上場企業とも組んで日本への浸透を図る。
現在は約10社と商談が進行中で、7月のJFWインターナショナル・ファッション・フェア(JFW‐IFF)でも数十社から相談を受けた。アイテムは社内外で配るエコバックが中心で、9月には5000点を納品の予定。代金先払いで、発注から生地の生産に3カ月、縫製と仕上げで2カ月、船での輸送に1カ月と半年かけて納品する仕組みだが、幅広い業界の有力企業が「利益を社会に還元したい。社員教育にも有効」とスローな物作りに共感を示している。
今後は国際フェアトレード認証ラベル製品の日本市場約100億円の10%を目標に、取り組み先とアイテムを広げ、綿製品
の普及を図る。百貨店の環境イベントなどで販売する限定品、病院や介護施設、ホテルで使う寝具やタオル、エプロンほか、「理念に共感してくれる企業となら50点から、一般の商品並みの価格で生産する」考え。
「国際フェアトレード認証ラベル製品の世界市場は約7000億円。ロンドン五輪のように東京五輪でも認定商品になれば、日本のフェアトレード市場は一気に拡大する。東京マラソンのTシャツなどから受注を広げたい」と期待を膨らませている。
写真=エコバッグやスカーフ、シーツ、Tシャツ、雑貨ほか幅広いアイテムで国際フェアトレード認証ラベル付き商品の生産ができる
(2014/08/18繊研新聞)