16年秋冬のメンズカジュアル商戦は、秋口の残暑と冬の気温低下の遅れから、際立ったヒット商品がなかった。MA‐1やライダーズジャケットなど数シーズン続いたトレンドアイテムが大手SPA(製造小売業)やチェーン専門店にも広がり、マス化して数量こそ売れたが、次シーズンにつながる「芽」となるヒットにはあまり恵まれなかった。
今秋冬は、マスに広がり、一定売れたアイテムがある一方で、チェスターフィールドコート、ケーブルやあぜ編みのミドルゲージセーター、メルトンのショート丈アウターなどセレクトショップの店頭ではほとんど売れなくなったアイテムも多かった。実需買いの傾向は強く、前年踏襲型MDに頼りすぎた店は、価格競争力のある大手に実売のボリュームを持っていかれた。
販売数量という点で見ると、1位だったのはMA‐1だ。アイテム自体は春先も含め3~4年にわたって売れ続けた。ただ、今秋冬はセレクトショップなど品揃え型の専門店では売れ行きの鈍化が顕著だ。ユニクロやファストファッション、チェーン専門店もこぞってMA‐1タイプのブルゾンを売るようになり、ブームとしては収束を迎えた感が強い。
2位のライダーズジャケット、3位のスカジャンもMA‐1と同じ動きを見せた。街中で着用する人の姿も多くなったが、売る店が増えたことで比較購買の対象となり、前シーズンほどの勢いはなくなっている。
4位のセットアップはいくつかのセレクトショップで春夏から継続して売れている。ストレッチやウォッシャブルなどの機能性を備え、パンツもイージーパンツ仕様で楽ちんというメリットから、カジュアルでも仕事着でも使えるとして、大学生から30代の社会人まで購買層は広い。
5位のコーチジャケットは、90年代ストリートの流れから提案する店が増えており、秋口に売れた。10位のボア付きジャケットと同様、マスに広がりすぎたショート丈ブルゾン以外のアウターを探す客の購買が多かったようだ。
6位のダウンジャケットはブランドでは「カナダグース」がもっとも強く、各ショップで今秋冬も早い段階でサイズ欠けが起こるなど良く売れた。「ザ・ノースフェイス」の本格仕様のダウンも人気で、オーセンティックな「ギア感」と街着としての「おしゃれ度」のバランスがヒットの理由のようだ。
7位のベレー帽は、キャップに代わって売れ始めた。レディスと同じように、ライダーズやミリタリー系のハードなアウターを中和するアイテムとして人気を集めた。
8位のバギーパンツも90年代ストリートの流れ。スキニーに代わって来春以降主流のシルエットになるかもしれない。
9位のふわとろニットは、不振のセーターの中でも健闘。編地を変化させたミドルゲージニットは大手SPAを含めどこも売っているため、フェミニンな表面感が新鮮に受け止められたようだ。