デザイナーブランドなどで経験を積んだ、実力派若手ブランドの台頭が目立っている。国内の有力セレクトショップと取引があり、パリやニューヨークの展示会で海外の卸し先も少しずつ開拓。今後の動きから目が離せない。(五十君花実)
デニムで見せる自由なエスニック/サルバム
前シーズンにショーデビューしたサルバム(藤田哲平)は、今季からレディスも開始し、ショーも女性モデルでスタートした。ウエスタンムードのギターをバックに、デニムのジャケットやデニムパンツのモデルが歩いてくる。裁ちっ放しで外に出た縫い代がラフなイメージだが、ヨウジヤマモトでの経験を生かした袖つけなど、クオリティーがしっかりしているので、チープな印象にならない。
ボトムは股上が深くスカートのように見えるパンツに、片足のみエプロン状に布を巻き付けるパンツ。デニムとともに軸になるのがテーラードジャケット。袖口や裾をカットしてフリンジにし、抜け感を出す。肩肘を張らない空気の中に、男女とも静かな色気が漂う。
テーマは〝エスニック〟。どこかの国や地域を指すものではなく、「(自由な考え方といった)思想的なこと」。藤田は、ヨウジヤマモトのパタンナーを経て13年にブランドを立ち上げた。レディスは、国内では今季ロンハーマンなどが取り扱う予定。トーキョー・ファッション・アワードに選出され、パリ展を始めたことで、海外卸し先も少しずつ伸びている。
ベーシックウエアの再構築/ヤストシ・エズミ
ヤストシ・エズミ(江角泰俊)は、引き続き建築が着想源。ビルバオ・グッゲンハイム美術館などを手掛けたフランク・ゲーリーからイメージを広げ、トレンチコートやシャツ、テーラードジャケットといったメンズウエアのベーシックアイテムを再構築する。
トレンチコートを分解したセットアップは、ラップスカートのウエスト部分が3枚折り重なるデザインで、直線を強調する。シャツドレスはフロントにばっさりとカットを入れ、中からジャケットの袖を腰に巻き付けたようなディテールをのぞかせる。男性的なデザインに柔らかさを加えるのは、布の動きと量感だ。カラーブロックのドレスは、帯のように切り替えたパーツの端が動きに合わせてひらひら揺れる。
シャツドレスの裾はバイヤスで切り替えてラッフルにし、MA-1ブルゾンもテントラインに膨らませたバックが風をはらむ。タータンチェックの織物に、幾何学柄のカットワークレースと、素材の表現も広がり、一皮むけた印象だ。海外展も開始し、国外のバイヤーの認知も高まってきた。
オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオ(アンドレア・ポンピリオ)のテーマは、〝シティーサーファーズ〟。「夢のカリフォルニア」のメロディーに乗せて現れるのは、ジャージーのボンディング素材で作ったトレンチコートやドレスなどのシックなリラックススタイルだ。
そこに、スエットトップやメッシュのインナーを合わせてスポーティーな感覚を差す。深いスリットやランジェリーを思わせるカッティング、透け感などで、レディスはいつもよりセンシュアルなムード。サーフボードを抱えたビーチウエア姿がフィナーレとなった。
(写真=加茂ヒロユキ、オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオは大原広和)