19年春夏パリ・コレクション 全て尖ってグッチ劇場

2018/09/26 06:30 更新


 【パリ=小笠原拓郎】19年春夏レディスコレクションは、終盤となるパリ・コレクションに突入した。これまではミラノ最終日にパリでのショーは行われなかったが、今シーズンは「グッチ」がパリへ発表の場を移したため、状況は激変。移動日にもかかわらず、いくつかのブランドがショーをした。

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 ビニール袋に入ったたくさんの球根。花屋の球根パッケージのような袋が、春夏のグッチのインビテーションになっている。ミラノを離れ、パリで発表の場に選んだのは、テアトル・ル・パラス。パリ8区の古い劇場の前は、普段の下町の夕暮れのにぎわいに輪をかけて、やじ馬であふれ返っている。その人並みをかき分け、劇場にたどり着く。

 天井の高い劇場のステージに、古いアングラ映像が流れ始める。スクリーンのストレートヘアの女性が叫び、震え、おぼつかない足取りで歩く。デカダンで不穏な空気を感じさせる映像が暗闇を照らす。オペラに重なる街のざわめき、サイレンの音。そんな音とともにフェザー刺繍のビジュードレスのモデルが現れる。モデルたちは劇場の通路を縫うようにして歩き、舞台へ上がる。

Images by Dan Lecca

 グリッターパープルのセットアップ、ビジューベルトを飾った黒いプリーツドレス、レパードプリントドレス。手には大きなフェザーのアクセサリー、黒いティアドロップサングラスをかけて表情を遮る。どこか遠くを見つめるようなモデルの表情が、ロマンティックで切ない音と重なって郷愁を誘う。男性モデルたちはパンツスタイルの上から股間を覆うレザーハーネスのようなパーツを重ね、極太ラペルのテーラードジャケットにニーハイソックスを合わせる。赤いブルマパンツのメンズも含め、これまでよりもぐっとアンドロジナスなムードが漂う。

写真=大原広和
写真=大原広和

 イチゴの可愛いプリントドレスは、中に着たブラックラテックスのインナーでフェティッシュなコントラストを描く。コートの背中にはドリー・パートンの顔が描かれ、他のアイテムにもドリーの文字がのせられる。ミッキーマウスのハンドバッグ、ミラー刺繍のドレス、グレンチェックのパンツスーツにタキシード。ゴージャスなドレスからキャラクターを強調したアイテム、アンドロジナスやフェティッシュなムードまで、様々な要素が尖(とが)りながら、グッチという一つの世界に収斂(しゅうれん)されていく。

写真=大原広和
写真=大原広和

 今回のコレクションとパリのこの会場との因果関係はどうなのかと問われれば、今一つ理解できないところもある。それでも、この劇場をトータルで包み込むグッチらしさのパッケージングには、他にはない勢いが感じられる。

Images by Dan Lecca
写真=大原広和

写真=大原広和

写真=大原広和

写真=大原広和

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