進化続ける丸井織物 長期ビジョン策定し、世界への飛躍目指す クロステック(X-Tech)で次世代事業創出へ

2020/02/26 00:00 更新




国内最大の織物メーカー、丸井織物(石川県中能登町)が進化を続けている。合繊長繊維織物を主力に、この間、受け身の委託ビジネスから主体的な企画提案による提案委託やテキスタイル自販へシフト。テクノロジーを駆使した生産システムの高度化や、オンデマンドのオリジナルTシャツEC事業なども軌道に乗せる。今年1月には長期経営ビジョン「Vision(ビジョン)2030」及び中期経営計画「Next Stage(ネクストステージ)―300」をスタート、世界への飛躍を目指し、一層のテクノロジー活用で次世代事業を創出していく。

◇三つの〝カクシン〟着実な成果に

 15年からの前中計「革新200」では、ものづくりとITの融合によって「業態」「製品」「技術」の三つの〝カクシン〟を目指したが、これが着実に進展。売り上げも順調に拡大し、最終年度を1年繰り上げて20年から次のステージに移る。この間、柱のテキスタイル事業では、商売形態は委託や自販などさまざまでも、自ら主体的に開発・提案したものが稼働の中心を占めるなどカクシンの手応えをつかむ。生産面では織機にセンサーを搭載するなどデジタル化、IoT(モノのインターネット)化を進め、生産性向上や開発のスピードアップを続ける。

 IT事業ではオリジナルTシャツをオンラインで受注生産する「Up―T」(アップティー)を筆頭にオンデマンド型ビジネスが新規で成長、M&A(企業の合併・買収)で新しい分野、売り先も取り込みながら、スマホケース、ネイルなどへオンデマンド事業を広げている。

織物工場

◇旧来ビジネスにIT活用、M&Aも継続

 このほど策定した長期ビジョンでは、30年に「世界に飛躍するカクシン・センイ・カンパニー」を目指し、20~24年の中期で新しいテクノロジーを取り入れたクロステック(X―Tech)による次世代ビジネスにつなげる。いずれも、若手社員らを中心にしたジュニアボードが半年強の議論を経て策定し、原点の〝織り〟をコアに据えつつ、将来の事業環境の変化を見据えた。

 数値目標は最終年度に売上高300億円(19年度約190億円見込み)と、環境が変化するなかでも着実に成長し、より高収益な事業体を目指す。

 基本戦略は衣料、産業資材、IT・新規の三つで策定。衣料は物作りにおけるITの活用を引き続き進め、北陸産地をはじめとする同業(水平)や前後工程(垂直)との多様な連携を強化する。

集中モニターで生産状況を可視化

 産業資材は、現状の限られた分野からさまざまな新規用途開拓を狙い、そのための専門組織立ち上げも計画する。

 IT・新規は18年に子会社化したオリジナルラボを核にサイトの認知を高め、オリジナルグッズの展開を広げていく。得意のSEO(検索エンジン最適化)技術を生かし、旧来ビジネスにITを活用することで再構築できるような分野への参入を狙い、M&Aも視野に入れる。

本社

◇カスタマイズTシャツが軌道に オンデマンド事業で横展開

 織物製造を本業とする丸井織物だが、ITを活用した新規事業に挑み、なかでもプリントTシャツなどのオンデマンド事業は国内屈指の規模に成長している。オンライン受注生産のプラットフォームを生かし、スマホケース、ネイル、似顔絵といったサービスにも広げている。

 カスタマイズTシャツを販売する「Up―T」(アップティー)をスタートしたのは15年。パソコンやスマホなどからユーザーが簡単にオリジナルTシャツのデザインができ、サークルのユニフォームやイベントグッズなどのほか、クリエイターの服作りも支援する。自社で受注~プリント~発送の仕組みを構築し、1枚から3営業日で発送という少量短納期のサービスが売り。

カスタマイズTシャツ例

 18年には同様の販売サイトを運営していたオリジナルラボを子会社にし、出口も拡大。Tシャツ以外に、バッグ、はっぴ、タオル、スマホケース、マグカップ、ネイルなどアイテムを広げ、オンデマンドのビジネスモデルを横展開している。また、全国のグラフィックアーティストらと契約し、オリジナルの似顔絵イラストを受けるサービスも始めている。

Up-T 工場

 プリント事業の拠点は、本社近くにあり、かつて小学校だった廃校跡だ。この中にTシャツ用のインクジェットプリンターは27台まで増え、スマホケース用プリンターなども含めると計42台を揃える。日本屈指のデジタル工場は、日本中の消費者とオンラインで結ばれ、さまざまなアイテムのプリントを日々、受注する。

 次は海外市場への進出を検討しており、越境ECサービスの準備を進めている。

https://up-t.jp/

■生地ブランド「ノトクオリティー」

ユーザー目線で機能打ち出し


 丸井織物は自社テキスタイルブランド「NOTOQUALITY」(ノトクオリティー)を昨年にリブランディングし、ユーザー目線に立った打ち出しを強めている。

 「私たちは、長寿命機能素材のプロフェッショナルです」のコンセプトを掲げ、「お気に入りの服を長く愛用したい」というユーザーの思いに応える生地作りを目指している。

 機能性も従来のような作り手本意ではなく、ユーザーにとっての分かりやすさを追求し、動きやすいストレッチ性、着ていることを忘れるような軽量性、洗濯脱水後に3時間で自然乾燥する速乾性、防寒着に求められる防風性の四つの機能を提案する。

 ノトクオリティーの進化は、17年に資本参加したアパレル企画のオールユアーズ(東京)との取り組みも契機になっている。オールユアーズは丸井織物と共同開発した生地を使い、機能を全面に出したシンプルな服をクラウドファンディングでヒットさせた。これも踏まえ、ユーザーの気持ちを捉えるメッセージや打ち出し方を意識し、セレクトショップのオリジナル商品などへの採用につながっている。織り・染め一貫の開発も強めている。17年に子会社化した倉庫精練との連携により、両社が取得したGRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)認証を生かしたサステイナブル(持続可能な)素材や、高付加価値テキスタイルが着実に成果につながっている。

丸井織物株式会社 代表取締役社長 宮本好雄氏

https://www.maruig.co.jp

《本社》

〒929-1801 石川県鹿島郡中能登町久乃木井部15 TEL:0767-76-1337(代)

《事業拠点》

七尾工場/〒926-0824 石川県七尾市下町丁部12-6 南部工業団地 TEL:0767-57-1711

黒氏工場/〒929-1716 石川県鹿島郡中能登町黒氏六95 TEL:0767-76-1833

東京営業所/〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3丁目27-15 HIサンロード原宿ビル3F TEL:03-6447-4321

福井営業所/〒910-0019 福井県福井市春山2丁目1-3 伊東ビル2F202号室 TEL:080-3046-1196

金沢営業所/〒920-0363 石川県金沢市古府町南459番地 TEL:076-249-3131



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