【ニューヨーク=杉本佳子通信員】21年春夏ニューヨーク・コレクションは、ガーリーなテーストが広がっている。現実逃避したい気分がファンタジーを求める方向につながっているのかもしれない。そこにスポーツやユーティリティー感覚を加えて、軽快感や機能性ももたせている。
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ロダルテは、ルックブックの写真のみを配信した。カリフォルニアの林道にモデルを立たせて見せた服は、今までと打って変わって普通に着られる服だ。素材も、カラフルでガーリーな色柄をのせたプレーンなシルク。今までのようなデリケートな素材や凝った手仕事を入れた服では、ウィズコロナのライフスタイルにそぐわないということか。花柄は、ポップなテーストまたはクラシックな壁紙調。ギンガムチェックやポルカドットもある。黒の縁取りで毒気を漂わせたり、ボーダー入りリブ編みをつけてスポーツテイストを加えたりして変化をつける。ヨークにラッフル、襟とカフスにはプリーツをはさむなど、クラシックなディテールも多い。頭にはコサージュをつけたチュールのヘッドピース、足元は透ける白のアンクレットにピンヒールサンダルと、小物もファンタジックでガーリー。
タラ・サブコフのイミテーション・オブ・クライストは、ロサンゼルスのスケートパークで撮影したショーを配信した。その日時に合わせて、ロサンゼルスとニューヨークでゲリラ的にリアルのイベントもした。あまりにも長いことファッションウィークから遠ざかっていたため、今さらと思ったが、世界観には時代性を感じた。男のイメージが強いスケートボードをする10代の女の子たちは勇気と自信に満ちあふれ、明るく伸びやか。暗い話題が多い昨今にあって、恐れを知らない屈託のなさに救われる。服は、スポーツとロマンチックのミックスに反逆気分を混ぜた。カラフルな花柄のドレス、ティアードスカート、ラッフルやレースにラグビーシャツを短くカットしたようなシャツ、落書き調のハンドペイントを重ねる。アップサイクルのコンセプトは不変で、ラグジュアリー古着再販小売業のリアルリアルと組んで古着を再利用した。すべてのコレクションはリアルリアルで即時販売し、利益をブラック・ライブズ・マター他の団体に寄付する。スケートボードの動きに合わせてCGの花を弾けさせ、ハッピーなレジスタンスを感じさせた。
動画配信で見せたアナ・スイも、いつも以上に可愛らしさを強調した。スモッキングやアップリケを入れたロマンチックなドレスと、そこにユーティリティー感覚のジャケットを加える。膝丈パンツとショーツもある。色はソフトなパステル、または黒とパステルのミックス。モデルの顔には、デイジーのフェイスペイントをのせた。
クラウディア・リは、コラージュ風にイメージをつなげた1分強の動画とルックブックの写真で見せた。昨秋、ハワイでの自身の結婚式で感じたシュールでファンタジックな感覚を現実とつなげてみたという。モデルはブルックリンベースのアーティスト、ケネディ・ヤンコ一人。彼女が溶接を学んだ薄汚れた場所を現実味ある場所として選び、そこでプリーツやキラキラ光るラメ、エキゾチックな花をジャカードでのせたオーガンディなどドレッシーな素材の服を撮影した。ドレスもあるがシャツやジャンプスーツ、フード付きコートなど、ユーティリティー感覚が目立つ。
(写真=ロダルテはDaria Kobayashi Ritch。アナスイはJackie Kursel。クラウディア・リはKristen TaylorWhite&Kamara)