22~23年秋冬ニューヨーク・コレクション 肩肘張らずに着られるテーラーリング

2022/02/16 06:28 更新


 ニューヨーク州は2月10日、公共交通機関や病院、学校などを除く屋内施設でマスク着用義務を撤廃した。ニューヨーク・ファッションウィークが始まったのはその翌日。マスク着用を今まで通り義務付ける会場と強制しない会場と、対応はまちまちだ。ワクチン接種証明は引き続き、入り口で提示が必須。ワクチン接種後2週間以上経過していなければ入場不可、としたブランドもある。それでも陽性率が3%台まで下がり、緊張感は少しほぐれた。

(ニューヨーク=杉本佳子通信員)

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 22~23年秋冬ニューヨーク・コレクションは、クラシックなテーラーリングを入れてきちんとした感じを出しながら、今の気分にあわせてエフォートレスに仕上げたアイテムが浮上している。キーアイテムはテーラードジャケットとトレンチコートで、構築的でありながら堅苦しくならないことがポイントだ。ドラマチックなボリュームをどこかに入れることもトレンドで、クラシックなパニエやクリノリンドレスをアレンジしたようなドレスが目立つ。

 プロエンザ・スクーラーは、イーストビレッジにある飾り気のない古いビルのワンフロアを会場に選んだ。こぢんまりしたコンテンポラリーアートのプロモーション施設だが、ショーの後、その会場を選んだ理由が見えてきた。見せたのは、アーティスティックな造形に凝っているが、シンプルで肩肘張らずに着られる服。コロナ禍で着やすい服に慣れたものの、ちょっとフォルムの変わったおしゃれな、それでいて気楽に着られる服がいい、という女性たちの今の気分に寄り添った服といえるだろう。バイオリンの五重奏による生演奏が響き渡る中で現れたのは、セーターの裾に布帛のスカートをはぎ合わせたようなドレス。厚手のストレッチブークレを使ってウエストをきゅっと絞り、対照的にふんわりと丸みをつけた腰部分がふわふわ揺れる。切り替えから下のスカート部分はふわっとしたボリュームをつくりながら裾をすぼめ、隙間から足をのぞかせる。

プロエンザ・スクーラー(写真=Jonas Gustavsson)

 ニットと布帛をはぎ合わせたドレスは、その後も同じシルエットでベアショルダーにしたり、袖山にボタンを並べたりしたバリエーションが並ぶ。テーラードジャケットも、堅苦しくないイメージを強調した。大きめのピークトラペルでワンボタンにしたり、腹巻きのようなニットを重ねたり。ニットのパーツはコートの腰にも巻き付ける。ふわっとしたボリュームのペプラムを付けたテーラードジャケットもある。

プロエンザ・スクーラー(写真=Jonas Gustavsson)
プロエンザ・スクーラー(写真=Jonas Gustavsson)

 フィジカルショーをライブ配信したジェイソン・ウーは、50年代のファッションイラストレーションに着想し、クチュールへのオマージュを込めた美しいコレクションを見せた。ポイントは彫刻的なシルエットとドラマチックなボリューム。そこに未完成のタッチを加えてリラックス感を漂わす。冒頭は、ファンシーツイードのビュスティエと黒のパンツ。パンツの前側にはオーバーサイズのボウをのせて、腰回りにふんわりしたボリュームを持たせた。ふんわりした量感は、襟とスカートにも登場する。ボウはクラシックなモワレやタフタを使い、無造作にねじっただけに見える抜け感が今っぽい。端をフリンジにしてたなびかせたファンシーツイードのミニドレス、ぼやけたようなタッチの花柄も未完成のニュアンスを加える。

ジェイソン・ウー(写真=Dan Lecca )
ジェイソン・ウー(写真=Dan Lecca )

 前回同様、展示会で見せたヘルムート・ラングのテーマは、「ユーティリティー、礼儀正しさ、逸脱」。テーラーリングに、ユーティリティーのディテールとランジェリーの要素を入れた。モーニングコート風に前端をカットしたビュスティエは、ショルダーストラップで機能性を持たせる。ミニドレスとしても着られるロング丈のテーラードジャケットは、ウエストのカットアウトから肌を露出する。トレンチコートを短くカットしたようなジャケットと、その残りの部分を使ったかに見えるミニスカートもある。素材はシアリング、レザー、非常に繊細なレースと、コントラストを利かせた。

ヘルムート・ラング

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