21世紀の始まりとともに輸入卸商社として産声を上げたティ・エヌ・ノムラ。21年に横井社長体制となり、次世代による経営革新が進行中だ。23年3月期は売上高120億円を数え、23年6月の伊ミラノへの事業所開設に続き、8月7日、新たな事業領域拡大に向け東京に新ビルを構え、新本社を設立した。第二の創業として東京を情報発信拠点とし、二本社制での新たな挑戦が始まった。
新たな世代での第二の創業
ティ・エヌ・ノムラはファッション関連商品をEU圏、アメリカ、世界から輸入し、全国有名百貨店および量販店、EC店含む専門店への輸入卸の総合商社です。扱いアイテムで多いのはバッグ、時計、靴、アパレルです。
コロナ禍で人々の生活や消費行動が変化しました。我々ティ・エヌ・ノムラは世代交代に加え、その変化に対応していかねばなりません。このたび東京に新本社を構えたのは、アフターコロナで変わる生活のニーズに応える企業へと第二の創業をするためです。コロナ禍は社会を数年先すら見えづらい予測の難しいものへと変えました。常に変化に対応するには、自らも変化する必要があります。新東京本社は、その決意を明確にするだけでなく、新たな商材を産み、それを広げることができる人材育成の基盤であり、我々の情報を世界に発信する拠点となります。
当社は01年4月に創業しました。創業から20年を数えた時には創業者の野村敏治会長は次の20年、30年後も成長を続けるためには次世代による第二の創業の必要があると考え、21年に副社長であった私に、コロナ下で大変ではあるが社長として勉強しろとバトンを渡されました。
社内的には数値目標を設けていますが、第二の創業の成功は数値的なものでなく、会社のあり方が時代に適応したものになれるのかに掛かっていると思います。私自身、最高執行責任者として学ぶべきものがまだまだたくさんあります。今でも会長からは日々、厳しさや思いやりなどを学ばせてもらっています。とくに人・モノ・金に関しての決断の速さは会長が勝っており、このスピード感を上回っていかねばと自覚しています。私が会長を越えられた時が、第二の創業の成功と言えるでしょう。私自身の成長も会社の成長に繋がっていくのではないかとも考えています。
会長の教えは「止まるな。動いて考えよう」です。まず動くことを忘れず、成果への精度を高めていければと考えています。
東京本社は第二の創業の象徴
今、当社がしなければならないのは、オリジナル商品の比率を伸ばすことです。誰もが知るティ・エヌ・ノムラの商品をプライベートブランドであれ、ライセンスブランドであれ、作り上げていかねばならないと思っています。そのために東京新本社ビルを購入したと言っても過言ではありません。
当社は創業1年目から東京に事業所を設けていました。共同トイレの雑居ビルに始まり、人員が増えるにつれ、移転と拡大を繰り返し、5回目の今回が新本社となります。
新本社ビルは8階建てで、現在の我々の事業内容、陣容からすると大きな器です。収益物件として数フロアを貸す案もありましたが、会長のアドバイスもあり、このビルを自社で埋め尽くせる事業を展開していこうと決意しました。実は大阪の本社ビルも創業から3年目で購入したものです。7階建てのビルに当時は従業員20人くらいだったので、空きフロアを倉庫に使うなどしていましたが、企業の成長が器に追いついた経験を我々は持っています。
大阪本社から人を送るのでなく東京本社で採用し、そこで育てられなければ、新たなビルに人・モノ・金は呼び込められません。東京本社は情報発信だけでなく、人材育成の機能としても期待しています。また先述のオリジナル商品企画・開発も東京本社で行います。当社の事業は今後、東京がメインであるという気構えを社内外に強く示していきます。
人財をもとに新規事業へ
東京本社には自社ブランドの「マイケルリンネル」、アイルランドのブランド「アヴォカ」などを扱う第3カンパニーを置き、マイケルリンネルはアッパー層に向けたリブランディングを始めています。アパレルアイテムを広げ、10月には東京・中目黒にフラッグショップを開く予定です。これは当社にとって初のブランド直営店となります。
百貨店などで販売している伊トスカーナの高級カジュアルシューズ「ブッテロ」はゾゾタウンでの販売も始めました。ブッテロ以外のブランドも扱うようになれば、靴のインポーターとしての当社の知名度を上げる可能性もあります。
休止していた新規事業開発の第2カンパニーも復活する予定です。新規事業はファッションに限らず、ライフスタイル関連を主体に考えています。6月にミラノに事業所を再設置しました。閉鎖前の事業所は主に情報収集機能でしたが、新ミラノ事務所は当社商品の輸出もにらんだアウトプットの拠点となります。世界に誇れる日本文化・伝統を反映したアイテムなどを、グローバルなインフルエンサーの力を借りて発信していくことなども考えています。
そのためにも学歴などの条件を設けず、ファッションに強い興味を持つ多様な人材を採用して、若い視点をどんどん取り入れていきます。当社はトップと現場の距離が近いのが強みで、新たな分野にも素早く柔軟にトライできる土壌があります。そしてピンチをチャンスととらえ、コロナ下でも売り上げを伸ばしてきた地力にも自負があります。
ファッション業界は弱っていると言われますが、新しい拠点のもと、新しい視点、商品、人財をもって、取引先にも活力を広げていきたいと願っています。
取引拡大のために売りも買いも東京を拠点に進めて行きます。カテゴリーにとらわれず広く自らも声をかけさせていただきたいし、多くの方からの連絡を待っています。
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