ジーンズを担当して20年の繊研新聞記者が、方々で仕入れてきたジーンズ&デニムのマニアック過ぎる話を、出し惜しみせず書き連ねます。今回は、味わいを出すのに不可欠な洗い加工から―――。
■ベテラン記者によるジーンズの深いぃ話-1
■ベテラン記者によるジーンズの深いぃ話-2
3、最初に石を使ったのは誰?~洗い加工の話~
ジーンズと切っても切れないのが加工。水洗いなどの加工をしていない、いわゆる生デニムといわれるジーンズは生地が硬く、ゴワゴワしていてはきにくい。そこで水で洗ったり、ドラムの中にジーンズと石を一緒に入れて回したり、酵素の力で生地を柔らかくしたりと、いろんな加工を施す。
生デニムのジーンズをリジッド、水洗いしたものをリンス、石を入れて洗うことをストーンウオッシュと呼ぶ。やはり画期的なのは石を入れてジーンズを洗うという発想で、誰が最初にストーンウオッシュを始めたのかということが、ときどき業界の話題になる。
記者が以前にフランスのジーンズカジュアルブランド「マリテ+フランソワ・ジルボー」のデザイナーであるマリテ氏とフランソワ氏を取材したとき、「ストーンウオッシュは自分たちが世界で最初にやった」と語ったことがある。日本の老舗ジーンズメーカーも「自分たちが最初」と主張しており、誰が本当の先駆者なのかさだかではない。
先輩記者に確認したところ「岡山・児島のクリーニング業者とジーンズメーカーの共同作業の中から生まれたものでは」と記憶をたどっていた。
加工したジーンズでおもしろい逸話が残っている。ジーンズが世の中に広まり始めたころ、あるジーンズメーカーが百貨店にジーンズを売り込みに行った。百貨店のバイヤーは「洗ってあるジーンズは中古品だ。うちでは中古品は扱わない」と相手にされなかったという。今からみれば笑い話だが、当時は大真面目にそんな議論が交わされていた。
ストーンウオッシュに使う石は現在では樹脂でできた人工石を使うことが多いが、昔は本物の石で洗っていた。どこの石がいいかということで、鹿児島の志布志湾のものが軽くていいということになり、そこの地主が大金持ちになったという話がある。
また、学問の神様として有名な大宰府天満宮の敷地の中の玉砂利を拾ってきて、さらにその石に合格祈願の祝詞を上げてもらった上で、洗い加工機にいれてジーンズを洗ったメーカーがあった。それを”合格祈願ジーンズ”と称して売り出したところ飛ぶように売れたそうだ。
(写真は全てイメージです)
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