今月、米沢繊維協議会を中心に物作りと飲食関連企業の18社が集まって「360°(さんろくまる)よねざわオープンファクトリー」が初めて開かれました。米沢のファンを作ることを目的にした、地域一体型のイベントで、出展企業や参加者から聞いた声を届けます。
企業同士もつながり
出展した1社、山口織物鷹山堂は今年で創業100周年。ドビー、ジャカード織機による呉服や婦人服地の生産を手がけ、90年代にジャカード織機による写真織りを確立しました。
東北地方で唯一の織物の緞帳(どんちょう)メーカーで、タペストリーや椅子用のファブリックも製造しています。デジタルジャカードの技術で裁断線を入れて製織し、生地ロスの少ない商品企画や小ロット多品種の製品開発にも対応してきました。
技術の進化やライフスタイルの変化に応じて事業を発展させていますが、代表の山口道子さんは「事前に他の参加事業者の工場を見て刺激を受けた。他社の工夫と技術には学ぶことが多かった」と言います。参加した企業同士で展示方法やワークショップの相談をしてチームワークが高まり、産地の強みを感じたそうです。
自社工場には2日間で160人が来場し、「自社のオリジナリティーは何か、どう伝えるかなど、改めて自分の仕事に対して向き合うことができた」と手応えを感じています。
社員の意識改革期待
主催者は、市内や県内からの来場を予想していましたが、近県や東京からも来場し、想像以上の集客となりました。
米沢織に興味があって福島から参加した女性は「直接見聞きして勉強になり、人柄も垣間見られて親近感が湧いた」そう。見学やトークイベントを通じて「企業が課題意識を持って新しい活動に取り組んでいる姿が、若い世代を引きつけて、また次の活動へつながる期待を感じた」と話していました。
また、地域の学生が授業の一環で工場見学をしたり、山形大学の学生の一部がボランティアで会場案内したりする姿も見受けられました。実行委員会副委員長でニトリト代表の鈴木健太郎さんは「地域の産業や企業を知って魅力を感じてもらい、就職先の候補にしてもらいたい」と言います。
一方で、参加企業にとっては「現場を見せたり、説明したりすることで、従業員が自社に誇りや愛着を感じたり、モチベーションを高めたりすることも期待しています」。関わる人や企業を増やして、5年、10年と続けていきたいと意気込みを語りました。
■おざわ・めぐみ
デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。