《ものづくり最前線》 松屋の宮崎バイヤー

2013/06/27 11:51 更新


 最近、百貨店のバイヤーが地方の縫製工場に入っていると聞くが疑問です。自主企画の開発と言いつつ、見学程度の人も多いという。お願いする側のバイヤーがものづくりについての知識、商品情報などを高いレベルで持っていなければ工場に入っただけでいいものは作れません。

 私の場合、オリジナルパンツを作っている九州の工場へは年6回足を運んでいます。現場に入り、女性スタッフともやりとりしますし、夕方の例会でも商品へのこだわりを話すなど理解してもらうための努力は惜しみません。ポケットの両玉縁をより細くしてもらったり、ボタンホールを50番手の糸を使いミシンで付けてもらったりと具体的で細かい指示を出します。プロにアドバイスするレベルじゃないと迷惑なだけです。

松屋宮崎バイヤー、国産を語るP1170498
 本来バイヤーとは製造原価の計算はもちろん、工場経営まで一緒に考えられるのが理想でしょう。日本で作る意味は海外ではできない難しいものを縫製することです。すぐにまねできない技術を追求すべきです。工場には難易度が高く工賃の高い仕事を選んでもらいたい。その作り手の苦労は小売側が店頭でしっかり消費者に伝えなければなりません。

 松屋銀座本店では数年前から1人の職人がすべての工程を縫い上げる「丸縫いスーツ」を紳士服催事「銀座の男市」にはじまり、常備のスーツ平場でも販売しています。このままでは消えていきそうな職人技を守りたい一心です。今年5月の紳士服催事では日本の縫製技術に加え、日本の生地にもスポットを当てました。日本で作るからには価格を大幅に超える価値を生み出す“オーバークオリティー”を目指します。



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