【ゲームチェンジャーU35】①ログズ社長の武田悠太さん

2017/05/03 06:50 更新


老舗問屋の跡取りの自覚は幼い頃からあった。「社長になる前に見聞を広げたい」と学生時代に自転車で日本一周し、バックパッカーとして70カ国以上を回った

 東京・馬喰横山。昔ながらの問屋街の一角に、ガラス張りのひと際目立つ建物がある。ユニークで多彩なビジネスモデルで注目を集めるログズだ。率いるのは、武田悠太さん(33)。大胆な発想と行動力で、この街に新風を起こしている。


■業界に「大義」を


 ログズは14年10月、老舗問屋・丸太屋の100%子会社となった。母体は24年創業の洋品雑貨卸、カネノ商店で、主力事業は問屋とOEM(相手先ブランドによる生産)の2つだった。しかし昨年、武田さんが社長に就任して以降、ブランドマネジメント事業とシェアオフィス事業を開始した。服だけにとらわれないファッションの面白さを追求し、ビジネスに付加価値を生み出している。


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 馬喰横山を「クリエイターの集まる街にしたい」。そんな思いでシェアオフィスを始めた。ファッション関連会社や編集者の菅付雅信さんなど7組が入居する。土日には「リトゥンアフターワーズ」デザイナーの山縣良和さんが主宰するファッションスクール「ここのがっこう」を開くなど、教育活動にも力を入れる。

 多種多様な人々が出入りするようになり、街の様子は変わりつつある。クリエイターとの交流から、新たなプロジェクトも誕生している。「自分自身にはコンテンツがないけれど、人のコンテンツを活用するのは得意。やりたいことをやっている人ってまぶしくて、めちゃくちゃ応援したくなるんです」

 アパレル不況と言われるが、意に介さない。大量に作って売るビジネスモデルはとっくに通用しなくなっているのに、服が売れないのは「やるべきことをやっていないだけ」。今、業界に必要なのは「大義」と話す。

 ファッションが「人類や社会にどう役に立つのか、真剣に考える必要がある」。ファッションが娯楽化するなか、「装うことでいかに社会に貢献できるかを示さないと、今の消費者には応えられない」と危機感を持つ。様々なクリエイターとの交流は、ファッションが生き残るための一つの道でもある。


■問屋事業で稼ぐ


 とはいえ、クリエイティブ領域でいきなり収益を上げるのは難しい。まずは柱である問屋事業とOEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)でしっかり稼ぐ。全体を俯瞰(ふかん)する目と冷静な分析力、コンサルティング技術は、前職のアクセンチュアで身につけた。

 「なぜだかよく分からないけど」と笑いつつ、家業である問屋事業には誇りがある。マスマーケティングを徹底、他社と差別化するため「価格を破壊しろ」と発破をかける。社内にデザイナーを抱えてトレンドを分析、工場に足しげく通って在庫も積む。「当たり前のことをきっちりやって、値入れ率を下げることにコミットするだけ」。やるべきことは明快だ。

 買収時に赤字だった業績を1年で黒字化し、今期も増収を見込む。事業領域の拡大にも意欲的で、B to C(企業対消費者取引)のECとグローバルマーケットへの参入も、もくろむ。「ファッションは服だけじゃない。領域を広げれば可能性はいっぱいある」。そう語る笑顔が人懐っこい。

84年東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。07年にアクセンチュア入社。14年に丸太屋入社後、同業のニューカネノ(現ログズ)の買収・再生を担当、16年ログズ代表取締役社長に就任。

      ◇   ◇

 「ファッション業界を今後面白くしてくれそうな若手」を、今春も紹介する。目立つのは異業種経験者だ。彼らには、ファッション業界の慣習からは見えにくい言葉があふれる。苦境のファッション業界を変えられるのは、内部の声よりも外の視点かもしれない。



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