嵯峨乃(さがの)や(岐阜県恵那市、大森將人代表)が販売する「ゲタル」は、ユニセックスの5本指の下駄ブランド。オリジナルの木型を使った履き心地の良さで、男女問わずじわじわとユーザーを増やしている。
(森田雄也)
外履きと内履き用
ゲタルはサンダル仕様の下駄で、ブランド名は「下駄」と「サンダル」を合わせた造語だ。一般的な下駄は底に「歯」があり、地面にその歯が接するため、慣れていないと歩きづらい。ゲタルはヒールの形状を採用しているため、初心者でも楽に歩け、カジュアルウェアにも合わせやすい。5本指で指ツボを刺激して血行を良くし、浮き指を防ぐ効果もあるという。
外履き用と内履き用があり、外履き用のアウトソールは耐摩耗性の高いビブラムソール、内履き用はクッション性の高いEVA(エチレン酢酸ビニル)を採用している。23、25、27、28センチの4サイズある。価格は外履き用8700円、内履き用9000円。
足を置く台座はオリジナルだ。一般的な下駄の台座は両足とも形が同じで、左右の区別がない。どちらでも履ける一方、サイズが小さいと指やかかとがはみ出てしまい、大きいと下駄がぶつかり合い、歩行時にがに股になりがちだ。
足裏の形状に合わせ
ゲタルの台座は足裏の形状に合わせているため、左右の区別がある。岐阜県東濃産のヒノキを採用し、シンクスの高精度コンピューター制御加工機、5軸のNCルーターで加工して作る。経済産業省の「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」(ものづくり補助金)に採択された機械で、1800万円かけて導入した。
通常の下駄は指股を挟む前坪が一つで、鼻緒がV字になっているが、ゲタルは5本指なので前坪が四つ必要となり、鼻緒もU字になっている。強度や指当たりを考慮して、前坪と鼻緒の素材は太めのフェイクスエードを採用した。
大森さんはコンサルタント会社勤務を経て、10年に独立した。京都出身ということもあり、個人できもののメンテナンスや染み抜き、仕立てなどを受け、京都の企業に仕事を回していた。ゲタルを開発したのは、知り合いの着付けの先生から「5本指の下駄を作れないか」と相談を持ちかけられたのがきっかけだ。
ゲタルの年間売り上げは現在、約600万円だが、1200万円が一つの目標だ。11月には岐阜県の看板商品に与えられる「飛騨・美濃すぐれもの」の認定を受け、勢いに乗る。販路は現在、EC販売が中心となっているが、今後は卸売りにも意欲を見せる。