ソニーが稲の籾殻(もみがら)から開発した活性炭「トリポーラス」がアパレル分野で広がりそうだ。臭い成分やウイルスを素早く吸着する機能とともに、籾殻を再利用するという環境配慮性が注目されている。
テキスタイル企業との協業を通じ、国内外で訴求を強め、世界最大のスポーツ用品見本市ISPO(独ミュンヘン)には2年連続で出展。業界関係者の関心を集めた。昨冬には「エディフィス」(ベイクルーズ)のPBにも採用され、店頭で販売された。
トリポーラスは何が優れているのか。従来の活性炭との違いは何なのかみてみたい。
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◇大小3種類の微細孔
トリポーラスは活性炭の一種。活性炭は化学的な処理で物質の表面に微細孔が作られた〝多孔質炭素材料〟だ。ソニーはリチウムイオン二次電池に関わる研究開発の過程で生み出したという。
トリポーラスには従来の活性炭に見られるマイクロ孔(2ナノメートル以下)だけでなく、メソ孔(2~50ナノメートル)、マクロ孔(約1ミクロン)といった大小3種類の微細孔があり、多様なサイズの物質を素早く吸着する。ミクロ孔では除去できない高分子物質やウイルスも吸着できる。孔の表面積に比例して吸着容量も大きい。吸着した物質は洗えば取り除けるため、「洗濯後は性能が復活する」という。
水や空気に含まれる汚染物質を除去する環境浄化フィルターや、消臭効果を生かせるトイレタリー、薬剤が主用途で、14年度には発明協会の21世紀発明奨励賞および21世紀発明貢献賞を受賞している。
▼トリポーラス」と従来の活性炭との構造比較▼
◇生地の種類拡充
繊維・アパレル分野での活用が本格的に始まったのは19年。消臭など機能素材の開発に力を入れているミツヤコーポレーション(大阪府堺市)との協業がきっかけとなった。ミツヤは協力メーカーとともにトリポーラスをレーヨンに練り込んだ「トリポーラスファイバー」を開発し、販売に着手。現在、協力企業は約15社。産地企業に糸を供給し、丸編みや経編み、織物、中わた、3次元立体編み物までバリエーションを拡充している。さらに、綿やリサイクルポリエステルとの混紡糸も加えた。昨冬からは、スタイレムも生地開発に乗り出し、メンズ、スポーツウェア用途で需要開拓を始めている。
(繊研新聞本紙20年3月19日付)