横浜を地盤としたカジュアルセレクトショップのヒースが伸びている。地元・横浜の「地の利」を生かした品揃えやインバウンド客を意識した物作りが奏功し、今期(23年12月期)の売上高は前年同期比60%増ペースで推移する。横浜エリアを中心に26年までに2~3店を出し、計7~8店とする計画だ。
ヒースは03年に立ち上がったカジュアルセレクトショップ。アメカジ主体の「ヒース」とトレンドを入れ込んだサーフカジュアルの「ブルーポート」業態を展開し、現在は横浜ワールドポーターズ(横浜市中区)に2店、横浜赤レンガ倉庫(同)に1店、有明ガーデン(東京・江東区)に1店、横須賀モアーズシティ(横須賀市)に1店を運営する。
同社の強みは、地場企業と組んで企画・開発した商品が充実していること。横浜DeNAベイスターズ公認のライセンスアイテムを出すほか、井上尚弥選手らを輩出した横浜大橋ボクシングジムや、FMヨコハマの人気DJなどと協業し、ダブルネームのオリジナルTシャツやパーカ、MA-1ジャケットなどを出している。いずれのケースも、店舗に来た客を介して関係者とのつながりが生まれており、店を軸としたコミュニティーが形成されている。
横浜に寄港する外国人客を意識した日本製製品も好評だ。海や港など、横浜の匂いを感じさせるグラフィックを入れたTシャツのほか、岡山産のデニム製品、横浜染めのシャツやパーカなどを開発し、土産消費をつかむ。入国制限が緩和され、外国人客が増えてきた22年12月以降は、売り上げ全体の20%を外国人客で占めるようになり、港に近い「ヒース赤レンガ倉庫店」では、同比率が30%になっている。
ヒースの「足腰」を強くしているのは、40%というオリジナル比率の高さだ。コロナ禍を機に生産背景が不安定になり、他のセレクト店では仕入れ品が思うように入荷しない事態が頻発するようになったが、ヒースではオリジナル品を計画生産していたことで商品を安定的に確保し、販売機会ロスを防ぐことができた。
同社の物作りを手掛けるのは、MDの久保寺宏明執行役員。カジュアルメーカー出身で、22年に入社して以降、横浜ならではの自社開発品を増やしていった。その結果、それまで仕入れ主体だったMDからオリジナル比率を高めることに成功した。オリジナルのTシャツ(税込み4500円)は、夏のみで1万枚を売るほどになった。
今後は新規出店とともに、越境ECにも注力する。そして、「横浜と言えばヒース」(久保寺氏)と言われるようなブランディングを進めていく。