身長175センチ、体重105キロ。がっしりした体形を強みに、通常は売れ残りやすい特大サイズを完売させる販売員がいる。アメリカンビンテージに着想するメンズブランド「ジェラード」の東京・恵比寿の直営店、ジェラードフラッグシップストアの店長、熊崎孝彦さんだ。インスタグラムで大柄な人向けの着こなしを発信したところ、熊崎さんを参考に商品を購入する新規客が、店舗とECで増えている。発信の経緯から聞いてみた。
(高塩夏彦)
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自分をキャラ化
――なぜ発信を始めたか。
コロナ禍に店舗での接客ができなくなり、全社でネットでの発信に力を入れたのがきっかけです。ジェラードは作り込んだ国産のアメカジアイテムが主力。こだわりを語る場を作る必要がありました。
ブランドのユーチューブチャンネルも始まり、自分も何か目立つことをしなければと考えました。ちょうどその時、体重が急増していたので、大きいサイズの着こなしを発信しようと思ったんです。
――どのような発信をしてきた。
社内の人が「0.1トン男」というキャッチーなフレーズを考えてくれたので、自分をキャラクター化することにしました。例えば、特大サイズの商品を着こなして、おいしそうに食べ物をほお張る写真をインスタグラムに載せるなどです。投稿には「食事の腕の上下運動でGジャンの袖の色落ちが進む」など、アメカジ好きがくすっと笑えるようなネタも入れています。
また、特大サイズの新作が入荷したら必ずコーディネート写真を投稿するように心掛けています。
たくさんの相談
――客の反応は。
フォロワー数は(現時点で)500人以下と多くはないんです。ただ、反響は多い。フォロワーのほとんどが大きいサイズの服を求めている人なので純度が高いんです。自分の身長と体重を書いて「私にも着られますか?」などの相談のDMを送ってくれるお客様がたくさんいます。
SNSを通して発信したことで全国から新規客を獲得できています。特大サイズの売り上げの6割がEC販売なのも、その影響でしょう。もちろん、店舗でも大柄なお客様の来店が増えました。最近は完売する商品も少なくありません。
率先して売りたい
――やりがいを感じている。
自分をきっかけにブランドを知って、顧客になってもらえるのはうれしいです。また、特大サイズは全商品で出すわけではなく、私が着たいとお願いしたアイテムを中心に商品化してもらっているので、率先して売らなくてはという責任感もあります。それがやる気につながりますね。
――今後は。
発信の幅を増やします。プライベートなシーンでのコーディネートも見せることで、より日々の生活での着こなしをイメージしやすくしたいです。アメカジは体が大きい愛好家が多いジャンル。もっとファッションを楽しむ手助けができればと考えています。