ここ最近、ベルリンのファッションについて聞かれることが本当に多い。音楽だけでなく、ファッション、アートなどのカルチャー全般に注目が集まっていることはとても嬉しく、今後の展開にも期待してしまう。
しかし、現状は決して洗練されているわけではないので、正直困ってしまうこともある。ただし、街でオシャレな人を見かけなくても、あるところには集まっているというのも事実である。
St.Agnesという複合施設はHPを見ても分かりにくいのだが、ギャラリーのKönig Galerieとベルリン発のカルチャーマガジン032Cがプロデュースするイベントスペースなどがあり、コンスタントにエキシビジョンやパーティーが開催されている。
そこで先日、イギリス人フォトグラファーDavid Simsが手掛けた『Supreme Book』のローンチパーティーが開催された。来場者はSupremeファンらしいスケートキッズから、モデル、有名ヴィンテージショップのオーナー、フォトグラファーなど多くの人でとても賑わっていた。
お酒が出る場所に夜遅く、10歳前後の男の子たちだけで来ていることがとても印象的だったが、ここは日本ではなくベルリンだったことを思い出した。
この日は、寒かったせいかMA-1率がとてつもなく多かったけれど、スケートファッションをベースに置きつつも、ハイブランドとヴィンテージのミックス、カラフルなカラーコンビネーション、柄ものをミックスしても古臭いアヴァンギャルドではなく、上手にまとまっている。
黒ばかりではない良い意味でのベルリンらしからぬ”個性的かつ洗練されたストリートファッション”を多数見ることが出来た。
実は、以前にも032cが主催するWILLY VANDERPERREが撮りおろしたRaf Simonsのアーカイブ展に訪れたことがある。その時から自分の中で、”ベルリン中のオシャレな人が集まる場所”に認定して、毎回チェックしているのだ。今回も良い”目の保養”をさせてもらった。
残念ながら私のデジカメのフラッシュが故障してしまったのか使えず、ただでさえ暗い会場がもっと暗く見えてしまうので、どんな人が来ていたかは、こちらのオフィシャルスナップをご覧頂きたい。
ちなみにこの撮影をしていたのが、ベルリン在住の売れっ子カメラマンLukas Gansterer氏。真っ白なMA-1にホワイトデニム、スニーカーも白で合わせた見事なスタイル。
全身白は欧州人でもかなり危険なコーデになると思うけれど、インナーに黒のTシャツ、黒のニットキャップを取り入れているところが良い。VICEなどをはじめ、度々著名人スナップでも登場しているオシャレ上級者である。
残念なのは、展示の仕方である。インテリアや内装にこだわるドイツらしからぬ簡素な展示で、作品点数は5分も掛からず見終えてしまう少なさなのだ。
写真集や雑誌のローンチであっても在庫をどっさり積んだテーブルもなく、宣伝用のポスターもない。全く関係のないフライヤーが雑に置かれている程度である。
さらにバーフロアーも薄暗く、喫煙所もエントランス付近も暗い。わざととしか思えないほど薄暗く、DJなどの仕込みもなく、パーティー感もない。
何か意図があるとしたら是非とも教えて欲しい。そう思いながら、オフィシャルFBをチェックしたら、一時帰国直前に50人限定で『Alexander McQueen×032c』のイベントがあったことを知る。内容は不明。マックイーン関連のイベントなんて希少なだけに参加出来なかったことがとても悔やまれる。
ベルリンも東京と同様に毎日のようにイベントやパーティーが開催されている。そして、東京にいた時と同様に仕事に忙殺されてどこにも行かなくなってしまっていた最近。
まだまだ知らないことだらけのこの街のおもしろいことを自分の足で見つけて、自分の言葉で伝えていきたい。それが自分のやりたいことだったことを思い出した夜でもあった。
宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。