【パリ=松井孝予通信員】伝統文化に関わる知的財産権をめぐり、世界の有力ブランドが現地側から批判を受ける事例が相次いだ。
メキシコ政府は、独アディダスのサンダル「オアハカ・スリッポン」が同国南部オアハカ州の伝統的履物を無断で模倣したとして批判した。モデルは同州ヴィラ・イダルゴ・ヤララグ村で作られるサンダルに似ており、発表時に現地との協力や出自の明示はなかった。デザイナーのウィリー・チャバリア氏が先頃謝罪し、アディダスは州当局との協議に応じる意向を示した。
ミラノ・メンズファッションウィーク26年春夏では、「プラダ」が発表したサンダルが、インド西部マハーラーシュトラ州発祥の伝統靴「コルハプリ」と似ており、起源の明示がないまま披露されたことが物議をかもした。コルハプリは19年に地理的表示保護(GI)を取得し、地域文化の象徴とされる。州商工会議所が説明を求め、プラダは「伝統靴に着想を得た」と認め、製品化する場合は現地メーカーと協力して製造する方針を表明した。いずれも、現地文化や工芸に基づく意匠を、十分な事前協議やクレジットなしに商業利用した事例だ。
伝統工芸や意匠は、特許や商標と異なり個人権利ではなくても、地理的表示や文化遺産保護法の対象となり、地域のアイデンティティーや経済と直結する。こうした出自を明示し、正当な関係を築くか否かが問われている。